コミスタ・自走人生のためのコミュニケーション力vol.1
元NHKアナの多様な転身術に学ぶ。
「誰もが不安な時代」に必要なコミュニケーション力。
コミスタ・自走人生のためのコミュニケーション力vol.12018.09.2850代の歩き方
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NHK(アナウンサー)、劇団四季、SONYなどを経て自ら起業するという異色の経歴を持つ瀧内泉さん。
現在、LEGIT株式会社を経営し、演劇・エンターテインメント業界にイノベーションを起こし、日本のコンテンツを世界に向けて発信していくというご自身の夢の実現へ向け邁進しながら、若者を対象にキャリアパスを考えるための活動も行うなど、様々な分野で活躍されています。
自身の夢の実現に向けた事業を行いながら、若者と積極的に交流をはかる瀧内さんに、世代の壁を超え、自走人生を歩むためのコミュニケーションについてお話をうかがいました。
面白いものを伝えたい、軸となってきた思い
瀧内さんのファーストキャリアはNHKアナウンサーでした。幼いころNHKの化学実験の番組を見て化学の面白さを知り、子供達に面白いものを届ける番組を作りたくてテレビ局への就職を決めたそうです。
その後、より直接的にエンターテインメントに関わるために劇団四季へ転職。さらにエンタメを発信していくためのテクノロジーに可能性を感じ、ソニー株式会社へ転職します。そして、ソニー株式会社退職後も何度かの転職を重ね、現在のLEGIT株式会社を起業されました。
異業種業界への転職を繰り返しながらも、面白いものをつくりたい、それを誰かに伝えていきたいという気持ちはずっと変わらず、持ち続けていたといいます。
「時期や経済成長的に、ものを作るということに関してはもうなかなか追いつけ追い越せっていう感じにはならないじゃないですか。でもコンテンツはまだいけるはず。」
瀧内さんは現在、日本のコンテンツを世界に発信していくことを目指しています。
「アジアを回っても皆が日本のコンテンツを好きだと感じる。もっというと(反日感情が強いと言われる)中国、韓国でも、若い人たちは結構日本が好き。ということは、きちんと日本のコンテンツを伝えていけば、伝わるし商売になるっていう確信はあるんだよね。」
この言葉からもわかるように、魅力的なコンテンツをアジア圏で発表していく構想を立てているそうです。現在は、日本のコンテンツを使って、原作を知らない海外の観客でも楽しめるスケールの大きな舞台作品を作ること、アジア圏を移動しながらロングランシステムを実現させることを見据え、事業を展開しているといいます。
次世代にとってより良い社会を作っていく
しかし、なぜ世界への発信にこだわるのでしょうか。
国内消費ではなく、海外進出を重視する理由を尋ねると、日本人が国内にとどまりがちであることへの危機感が見えてきました。
「鎖国をして日本の中だけで生きていけるならいいけど、そうもいかない。どこかの国と相互関係がないと生きていけない中で、日本人だけが外に行かないというのはもったいないし、発展しないと思うんです。じゃあ、どうしたらいいかというと、日本人が(海外に)行きやすいコミュニティを何か作ってあげればいい。その一つとして、コンテンツという手はあるんじゃないかと思っているんだよね。」
瀧内さんは、劇団四季時代、『ライオンキング』を手がけながら、「日本人が日本人のコンテンツを世界に発信していかなければならないという気持ち」を感じていたといいます。
コンテンツへの愛と、次世代にとってより良い国であってほしいという思いから、現在まで活動を続けているそうです。
「もし自分が生きている間にできなくても、なんとなく礎を作って、それを乗り越えていく人がいたらいいなあと思ってます。」という言葉から、自分だけでなく、後続の世代を見据えた意識が垣間見えました。
「みんな不安な時代」だからこそ伝えていくべきもの
瀧内さんは今、「若い世代もおじさんたちもみんな不安」であると指摘しています。
社会のあり方が大きく変化し、終身雇用や年功序列が当たり前で無くなってきた現在、若い世代はロールモデルを見出せず、大人たちは自分の経験がそのまま活かせないために伝えるのをためらってしまう、世代間のコミュニケーションギャップがあるといいます。
本来大事なことは、お互いがためらうことなく、それぞれが積み上げてきた経験を伝えていく必要があり、その結果、年長者の経験の一部が今の時代にも通用するということを若い世代へ伝えていかないと日本は良くならないんじゃないかと危惧されています。
確かに、現代は個人の経験がそのままロールモデルになる時代ではなくなっています。しかしそんな時代だからこそ、瀧内さんは、個人の経験をピースとして若い世代に渡していくことは可能だと考えてるようです。
滝内さんは言います、
「大学でキャリアについて話していると『安定してるやつにチャレンジだのなんだのって、蹴とばしたくなる』なんて言う子がいる。でもさ、安定している人がチャレンジしてないってことではないじゃない。だから、こういう子たちに『いやいやいや!』って。安定してるように見えるけれども、こういうチャレンジもしてきたし、だからいい事もあったって言うことはできる。
あるいは逆に、おっしゃる通りです、だっていい。だいたいさ、死ぬ時の後悔として必ず出てくるのが、もっとチャレンジしとけばよかったっていうことでしょう。その反面教師として、僕はできなかったから頑張ろうよ、でもいいじゃん。」
いつだって、誰だって不安。だからこそ重要なコミュニケーション
現在52歳の瀧内さんは、間の世代として、若い世代の不安も、もっと上の世代の不安も同じくらい感じるといいます。
そもそも日本人は世代間コミュニケーションが苦手であることを指摘しつつも、「押しつけじゃなく対話として、伝えられるものをちゃんと伝えてあげられるといいと思う」と話してくれました。
「例えば60代なんていったら、日本の戦後を作ってきた人たちじゃないですか。そういう人たちを若い人はもっとリスペクトすべきだし、親父さんたちはそれこそ若い人としっかり対話をすることで伝えられるものってあるんじゃないって気がします。すいません諸先輩にって感じですが!」
そう恐縮しつつ語る瀧内さんですが、穏やかで茶目っ気のある言葉遣いの中に、全ての世代の人々を見渡す深い洞察力を感じました。
自らの経験を通して、世代を超えた協働を目指し、次世代へバトンを渡すべくコミュニケーションを図っていくことこそ、今後の自走人生を歩むために必要なものなのではないでしょうか。
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- 瀧内泉(たきうちいずみ)さん
- 1966年生まれ。1991年日本放送協会にアナウンサーとして入局、「おはよう日本」「長野オリンピック」「BSニュース50」、等キャスター・リポーターを務める。劇団四季 国際部・広報部、ソニー株式会社、ジャパンケーブルキャスト株式会社、フィールズ株式会社を経て2015年にLEGIT株式会社を創業。