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仕事
2019年03月25日

自分のキャリアは自分で決める!vol.3

自分のキャリアは自分で決める!vol.32019.03.25働く


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「今の会社に勤め続ける」シナリオの思わぬ落とし穴

vol.2では、「ビジネスパーソンのキャリアの選択肢」と題して、多くのビジネスパーソンが結果として選択することになる「今の会社に勤め続ける」シナリオについて、そのメリットを中心に考えてみました。
「やはり、このシナリオが一番安全で無難だな」と思われた読者の皆様も多いと思いますが、今回は、このシナリオを選択する場合に留意しなければならないポイントについて解説したいと思います。

実は職場の雇用義務が無くなる65歳以降が長い「人生100年時代」

国や企業が決めた雇用期間に従って働くシナリオです。

まだ、正式に決まっているわけではありませんが、厚生年金受給開始がさらに後ろ倒しになることは、年金の担い手が減り、受給者が増える少子高齢社会においては必然の流れといっていいでしょう(欧米諸国では既に、67歳~68歳からの支給開始という国がほとんどです)。

これからシニア世代を迎える方々は、年金が60歳から満額支給され、年功賃金の恩恵をフルに受けることができた団塊の世代の方々とは全く状況が違います。

さらに、晩婚化が進んだことで、子供をもつようになる年齢もどんどん遅くなっています。その結果、学費負担のピーク時が後ろ倒しになって、経済的にも 「働けるうちは働かざるを得ない」状況になっています。

人生100年時代となって、今後は「働けるうちはいつまでも働く」ことが生活面でも生きがい面でも健康面(認知症予防など)でもマストになってきているのです。

今後70歳、75歳と雇用期間が延長される可能性もありますが、90歳、100歳まで働くのは無理があります。国も会社もあなたの人生の最後まで面倒が見切れないのです。人生100年時代には、仕事を辞めた後の人生が長いのです。

こうした問題意識のもと、前回コラムで検討した「収入」と「仕事の内容」を前回とは違った角度から考えてみたいと思います。

【収入面】

60歳以降の賃金水準は、所得のピーク時と比較して大幅な減額になりますが、絶対水準としては、絶妙な賃金水準になっているのは前回説明させていただいた通りです。また、60歳以降の再雇用者(あるいは定年延長者)に対しても評価を行い、その結果を賃金に反映させることを検討する企業も増えていますので、現在のように「評価もせず賃金も上がらず」という状況は少しずつですが改善される方向にあります。

60歳以降もやる気を落とさず生きがいをもって仕事ができるシニアにとって、この動きは朗報である一方、役職定年等でモチベーションが落ちてしまい、「下がった給与相当分の働きで十分だ」と残された期間、ある程度のゆとりをもって仕事をしていこうと考えていた人にとっては逆風です。

年下上司から厳しく評価され、評価によっては賃金のさらなるダウン、あるいは意に沿わない仕事や慣れない仕事を押し付けられたり、最悪の場合は契約終了で失職すらあり得ます。「働かないシニア」に対する若手・ミドルの視線は非常に厳しいと、十分認識しておく必要があります。

【仕事の内容】

少し前に大手の銀行で大規模な人員削減が発表され大きな話題になりましたが、その裏付けとなっているのが、人工知能(AI)やロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)と呼ばれる事務的作業の自動化の動きです。

60歳以降の業務も、今までは、定年前と同じ気心の知れた職場の仲間と慣れ親しんだ仕事をこなしていけばよかったのですが、今後は担当する業務自体が無くなることも想定しておく必要があります。

また、2015年派遣法改正(同一の職場での3年以上の派遣の禁止)、労働契約法改正(5年を超える契約更新で無期労働契約への転換義務)により、会社も従来のように「ノンコア業務を派遣社員や契約社員に任せきり」といった体制での業務運営は難しくなってきています。

そんな中、単純作業などの担い手が確保しにくい“ノンコア業務”に従事する要員に定年再雇用のシニア層を充当するケースも当然増えてきます。「会社生活の先達として今まで培われたノウハウ・経験の伝承をお願いします」などと悠長なきれいごとばかりを会社も言っていられないのです。

今までの経験・スキルは関係ありません。「多くの人が敬遠するような環境の職場で働いてくれ」と、消耗品のような扱いに甘んじなければならないケースが増えてくることを想定しておく必要があります。

60歳(あるいは役職定年後の55歳)から65歳までの期間をそれまで何十年も培ってきた経験・ノウハウを活かすことができない仕事に就くことは、決して望ましいことではありません。せっかく長年培ってきた貴重な経験・スキルを「死蔵」させてしまうことになります。

60歳を過ぎてどのような仕事を充てがわれるかは、その時になってみなければわかりません。何をするのかは、あなたが決めることはでないのです。「定年後の人生を会社の決定に委ねる」。これがこのシナリオの本質です。

60歳前に一度立ち止まって自分のキャリアを考えることなくなし崩し的に65歳を迎えた場合、以降のキャリアはノープランになってします。どのようなシナリオを選ぶにしても、人生100年の時代、最終的には国や企業の施策頼みの先の見えない『エンドレスなマラソンレース』から自ら主体的に働く期間を決める『エイジレスな人生レース』にエントリーしなおす必要があります。

次回、最終回では、「100年人生キャリアプランをデザインする」というテーマで、人生100年時代の自律的なキャリアデザイン術を考えてみたいと思います。

vol.4へつづく

木村 勝 プロフィール
中高年専門ライフデザインアドバイザー、電気通信大学特任講師
1984年一橋大学社会学部卒業後、日産自動車に入社、人事畑を30年間歩み続ける。中高年の第二の職業人生を斡旋する部門の部長として、中高年の出向促進業務に従事。2014年独立。著書「働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書」(朝日新聞出版)
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