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仕事
2019年03月20日

“年の功”に油断してはいけない

自走人生のススメ vol.8:“年の功”に油断してはいけない 2019.03.20定年後入門


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『みなさん、この研修は“肩たたき”ではありませんよ。50歳は人生100年の折り返し点です。これまでの自分を振り返るとともに、65歳までの会社人生をどう全うするのかを考え、そして65歳以降の“自走人生”のための準備をスタートさせるための研修です。お分かりいただけましたか?』

私が講師を務める「50代からのキャリア開発」研修での一コマ。研修を主催する企業の人事部の方に伺ってみると、50代前半の社員に対してキャリア系の研修を実施する際には「肩たたき研修」と勘違いされないように気を使っているのだそうだ。

研修開始前に、何やら浮かない顔をしている50代社員がいたので理由を聞いてみた。すると、「研修の案内を人事部からもらった時に、俺ももう50を超えたんだと実感したんです。こんな研修に招集されるということは“そろそろ先が見えてきた”ってことなのかと考えると気持ちが萎えてしまって…」という。研修を受けてもいないのに、勝手に“肩たたき”と思い込んでしまっている。

『亀の甲より年の功』、『老いたる馬は道を忘れず』、『一日の長』など、先輩社員やシニア社員などをリスペクトするコトバはたくさんある。長年の経験の中で蓄積された知識やスキルが大いに生かされているようだ。まさに「シニア万歳! 老いることに自信を持とう」である。

一方で、この長年の経験が「かさぶた」のようになってしまい、「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)」を形成している場合もあるので要注意だ。過去の経験が、自分でも気づかないものの見方やとらえ方を作ってしまっているのだ。先の「肩たたきとの勝手な決めつけ」もアンコンシャス・バイアスによるものかもしれない。

『定年後研究所がホームページを通じて提供しているコミュニケーションスタイル診断ツール「コミスタ」(無料提供・会員登録要)の中に「認知傾向チェック」がある。ものごとをどのように受け止め、考えるかを心理学用語で「認知」と呼ぶが、「認知」はコミュニケーションに影響を与え、場合によっては、自分が何かを伝えようとすることを妨げたり、相手からのメッセージを読み違えたりする原因となる。

例えば「失敗恐怖の傾向」がみられる人は、「間違いや失敗はあってはならない」という考え方が強く、自分や他人に対する要求水準が高くなってしまう。そのため、相手への攻撃的なコミュニケーションや防衛的で打ち解けない態度が出てしまうこともある。

認知傾向をチェックする過程で、自身のアンコンシャス・バイアスの存在に気づくことができる。そうすれば、「年の功」とおだてられることにも油断することなく、『老いては子に従え』ということを一方で意識しながら、後輩たちを指導することができるのではなかろうか。

夕刊フジで毎週金曜日に連載中


日本で初めての「50代以上会社員」に特化した、定年後ライフの準備支援機関。定年後の「自走人生」を目指すシニアを応援。ポータルサイト『定年3・0』を通じ、コミュニケーションスタイル診断アプリ「コミスタ」を無料提供中。


得丸英司(とくまる・えいじ)
1957年生まれ。「一般社団法人定年後研究所」所長。星和ビジネスリンク取締役常務執行役員。
大手生命保険会社で25年にわたり、法人・個人分野のFPコンサルティング部門に従事。日本FP協会常務理事、慶應義塾大学大学院講師などを歴任。日本FP協会特別顧問。

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