1. HOME
  2. ライブラリ
  3. 自分のキャリアは自分で決める!vol.2
仕事
2018年12月25日

自分のキャリアは自分で決める!vol.2

自分のキャリアは自分で決める!vol.22018.12.25働く


[top_taglist]

「ビジネスパーソンのキャリアの選択肢」

vol.1では、家族を含めたキャリアの棚卸の必要性について説明させて頂きました。
男女とも平均寿命が延び、「人生100年時代」といわれるこれからは、「定年60歳・定年後再雇用65歳」といった国や会社が設定した区切りからの “先” が長いのです。その意味でも今まで歩んできたキャリアを振り返り、これからの自ら進むべき方向性を見極めていくことがますます重要になっています。

ミドルシニア層のビジネスパーソンに想定されるキャリアの選択肢にはどのようなものがあるのでしょうか?実は、極めてシンプルです。
・シナリオ1:今の会社に勤め続ける
・シナリオ2:転職する(含む「出向」)
・シナリオ3:独立起業する

の3つのシナリオです。(それぞれ3つの関係は下記参照)

今回は、多くの読者の皆様が想定しやすい、最も現実的な「シナリオ1」にスポットをあてて、考えてみたいと思います。

ビジネスパーソンに対して独立起業を勧める記事や本が主流の中、今の会社に勤め続けるというと、「会社にぶら下がる」「会社にしがみつく」など、ネガティブなイメージで語られがちですが、今も昔も多くのビジネスパーソンが悩みながらも歩むことになる王道ともいえるシナリオです。

高度成長の時代には、このシナリオこそが唯一かつ盤石の選択肢であり、長年勤続を積み上げてきた日本のビジネスパーソンは、ほとんど何も考えることもなくこのルートを歩んできました。

この、「シナリオ1」を「収入」と「仕事の内容」の両面から考えてみましょう。

【収入面】
『継続勤務後の再雇用時には、給与は現役時代の半分程度の水準になることを覚悟しなければならないが、相場としては絶妙な水準設定』

2013年に人事の専門誌『労政時報』が大企業を対象に実施した「中・高年齢層の処遇実態」という調査結果があります。この調査結果に基づき、定年退職後再雇用時の年収を確認してみると、最頻値は年収300万~400万円のレンジで、フルタイム勤務での平均年収は328.8万円でした。定年年齢到達時の年収との比較で、40~50%(平均は54.2%)程度の収入となっています。

この平均328.8万円という数字をみてどういう印象をお持ちですか?「こんなに安いのか!」という印象をお持ちのかたが多いと思います。

この数字を冷静に分析してみましょう。平均328.8万円という数字を12カ月で割ると、月額27.4万円。この水準の年収をもっと若い年齢層と比べてみましょう。国税庁の「民間給与実態統計調査(平成29年分)」をみると、ちょうど25~29歳のレンジ、361万円より少し下という水準になります。

「40年近く会社に滅私奉公して最後はこの水準か、バカにするな」「20代後半の若造と何で一緒なんだ」と怒りの声が聞こえてくるような気がします。

ところでこの水準、本当にそれほど低いのでしょうか? 確認してみましょう。
ハローワークのパソコンで調べればすぐにわかることなのですが(今は自宅のパソコンからも求人検索は可能です)、年齢不問の一般事務を検索してみると、月給ベースで20万円前後という求人が大多数です。

2018年10月現在、東京都の最低賃金は985円ですので、1日8時間勤務、月20日間勤務で計算すると157,600円。20万円という数字はまったく常識外れの低賃金というわけではありません。

60歳の年齢で、定年後に何の準備もなくこの求人に応募した場合、多くの若者求職者と肩を並べてあなたが採用される可能性はあるでしょうか?採用される自信はありますか?

厳しい現実ですが、おそらく著しく可能性は低いでしょう。

求人票は“年齢不問”となっていますが、これを真に受けてはいけません。雇用対策法という法律によって例外(期間の定めのない契約を結ぶ場合で、かつ特定の理由がある場合のみ等)以外は、若い人材だけを活用したくても「年齢不問」と表記せざるを得ないのです。

こうした求人に応募すれば、結果は火を見るより明らかです。実際は、間違いなく若手からの採用になります。頑固な年配者は採用する側としてはとても使いにくいのです。このように現実的に考えると先ほどの月額27.4万円という数字はけっして悪い金額ではありません。

こうした視点で考えると60歳定年後再雇用の賃金水準は、絶妙な水準設定といえるかもしれません。

【仕事の内容】
『長年勤めた気心の知れた職場で慣れ親しんだ仕事を行うのは安心感あり』

先ほどの『労政時報』の調査で、再雇用後のフルタイム勤務の職務内容をみると、「定年前と同一職務・同一部署」が57.8%と最多になっています。半分以上のケースで定年前と同じ職場で同じ仕事をこなしています。

無事に60歳定年まで勤め上げ、給与は半減しますが長年慣れ親しんだ会社に再雇用されることができたあなたにとって、やはりこのレールに乗り続けることが今時点の選択としては短期的には一番リスクの少ない選択かもしれません。

もちろん、事業環境の変化や会社の不祥事によるリストラ、M&Aによる事業売却など予断は許しませんが、それは「転職(出向)」のシナリオも同様です。

会社が敷いた定年再雇用のレールに乗り、気心の知れた仲間のいる職場で慣れ親しんだ仕事をしながら、(給与は半減しますが)65歳まで働くシナリオは、やはり手堅い選択のように思えますが、本当にそうでしょうか?

次回は、意外に皆様が知らないこうした安全策と思われるシナリオの思わぬ落とし穴について解説したいと思います。

vol.3へつづく

木村 勝 プロフィール
中高年専門ライフデザインアドバイザー、電気通信大学特任講師
1984年一橋大学社会学部卒業後、日産自動車に入社、人事畑を30年間歩み続ける。中高年の第二の職業人生を斡旋する部門の部長として、中高年の出向促進業務に従事。2014年独立。著書「働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書」(朝日新聞出版)
[taglist]

ページトップに戻る