1. HOME
  2. ライブラリ
  3. 定年前後の人のための「講師デビュー」入門 vol.5
仕事
2018年08月02日

定年前後の人のための「講師デビュー」入門 vol.5

培った知見が大きな財産!

定年前後の人のための「講師デビュー」入門 vol.5 2018.08.01学ぶ・教える


[top_taglist]

講師になるテーマは、あなたの足元にある

これまでのビジネス経験を、講師として次世代のビジネスパーソンに伝えていく。定年後の働き方として、とても魅力的に見えますが、「どうしたらその道に進めるのかわからない」という方も多いと思います。本連載では、講師養成の専門家であり、『定年前後の人のための「講師デビュー」入門』の著者でもある鈴木誠一郎さんに、「講師への道」をナビゲートしていただきます。

連載も6回目になりました。講師を仕事にするためには、何を教えるのか、すなわちテーマを定める必要があります。ここでは、世の中にどのようなテーマがあるか、その広がりを探りつつ、どうやって自分のテーマを見つけるかを検討していきます。

「テーマ」の広がりを理解する

講師デビューする場合、考えなくてはならない最も重要なことは、あなたが扱う「テーマ」です。これは、あなたが聞き手に対していったい何を伝えたいのかということ。この時点で、既にある程度は考えているという方もおられるかもしれませんが、まずは一般的にどのような「テーマ」があるのかをみていくことにしましょう。

1)最も多いスキル獲得型セミナー

これは、ビジネスに関わる種々のスキルや能力を向上させるもので、セミナーや研修会と呼ばれるものです。例えば、コミュニケーション能力向上セミナー、コーチングスキルセミナー、プレゼンテーション能力強化セミナー、ファシリテーション能力向上セミナー等であり、主として毎日のビジネス上で使う実務能力を向上させるセミナーです。他には、専門分野の知識や技術の向上を目的としたセミナーがあります。財務会計能力向上セミナー、プログラミング能力強化セミナー、システムエンジニア向けセミナー等でスペシャリストを養成するものです。

2)昔からポピュラーな語学系セミナー

近年、企業においてますます語学能力が求められるようになってきています。英語、中国語、韓国語、フランス語等が、比較的多い講座です。個人向けと企業の社員向けのものがあります。語学系については、ご存じのとおり昔から都市部や駅の近くに多くの語学系教室が存在しています。また最近では、翻訳者を育成する教室も見られるようになってきています。したがって、会話能力や翻訳能力が極めて高いか、あるいは珍しい言語について高い能力を持っていれば語学系で講師デビューできる可能性も出てきますが、現実的には大手語学系教室が一手に集客している状況にあります。語学系の講師を希望する場合は、大手の語学系教室で行っている講師募集の情報を集めることが必要です。

3)自分磨き系セミナー

個人向けのセミナーが中心となるものです。ビジネスマナーセミナーや好印象をトレーニングするプレゼンスセミナー、ファッション&スタイルセミナーなどユニークな内容のものが増える傾向にあります。もしあなたが、例えば、どんなタイプのお客さまにも必ず好印象を与える「おもてなし」の心とスキルを持っている、誰もが認める秀でたファッションセンスと知識を持っている、誰にでも瞬時に好かれるスキルを持っている、人前でも決してあがらないノウハウを持っている、人の心を読み取るスキルがある、必ず習慣にできるノウハウを持っている、大災害から必ず逃れられるリスクマネジメント能力を持っている等々、秀でた能力を持っているのならば、すぐに講師デビューできます。自分磨き系セミナー市場は、ユニークな知識やノウハウが、個人にウケる市場でもあります。

あなたのテーマは、あなたの足元にあります

いかがですか。あなたの得意な分野、強い分野、資格を持っている分野、大きな興味関心のある分野がありましたか。でも、問題は一般論でなく、あなた自身のテーマです。「講師デビュー」するにあたって、どのようなテーマで講演するのか、セミナーを開催するのか。そこが大事です。ただし、あなただけの「オリジナル・テーマ」を見つけるという作業は、実はあまり難しくありません。新しく何かを考えるということではないからです。「ええっ!そんな講演テーマになるようなものはないよ」と思われたかもしれません。そう思ったのには理由があります。あなたがこれまでに経験してきた事柄や獲得してきたスキル、知識というのは、あなた本人にとってみれば当たり前のものでしかなく、無価値にみえてしまうからです。しかし、他の人からみれば、必ずしもそうではありません。

例えば、「糖度の極めて高いミニトマトの作り方」を知っている家庭菜園オタクがいるとします。本人にとっては、何ということはない、ごく当たり前のノウハウかもしれません。しかし、家庭菜園で「ミニトマト」を育てるというのは、実はなかなか難しいそうで、そのノウハウを知りたい人は、大勢いると考えられます。つまり、「糖度の極めて高いミニトマトの育て方」は、とても有力な「テーマ」ということになります。

あなたのアタマの中にある知識や経験は、あなた本人にしてみれば「無価値」であるけれども、他の人からみれば「価値」ある知識や経験になるということがしばしばあります。「テーマ」を探している時は、自分が持っているこの知識は、他人にとっては、どんな価値があるのだろうか、という観点から捉えてみることが大切なのです。

大事なのはピンポイント!講演のジャンルやテーマを絞り込む

拙著「定年前後の人のための講師デビュー入門」(同文館出版)には、特別付録として「自分だけのテーマがすぐ見つかる!一発検索オンリーワンテーマ発掘チャート!」というものが盛り込まれています。この「オンリーワンテーマ発掘チャート」では、これまで最も親しんできた分野、最も時間をかけて培ってきたジャンル、最も興味関心のある領域が「テーマ」になっています。「講師デビュー」にあたっての最初の講演テーマやセミナーテーマは、あなたの一番近いところにあった事柄に関するものが最適です。なぜなら、あなたは既にそのジャンル、そのテーマに最も「詳しい」からです。詳しいということは、深く掘り下げている知識があり、そのテーマに関して、いろいろ経験をしてきたということです。他の人が知らないようなところまで知っているということであり、十分に話ができるということなのです。

最近では、私たちの嗜好(しこう)の多様化に伴って、講師の専門分野も多種多様化してきています。あなたが、これから講師デビューするにあたっては、このテーマ、この分野なら私に任せてくださいといえる分野を持たなくてはなりません。それが既存講師との差別化となるわけです。この差別化が、あなたに依頼が来るための前提条件でもあるのです。

もしかしたら、専門テーマを絞り込むと、対象受講者が狭まるから結果的に来る依頼が少なくなるのではないか、という不安が出てくるかもしれません。このような不安感は、どちらかというと中小企業診断士や税理士、弁護士、社会保険労務士の方々が強く感じているものです。なぜなら、ある専門分野に特化してしまうと、それ以外の分野については詳しくないと思われてしまう、と感じるからでしょう。しかし、今はその「逆」です。幅広い分野を守備範囲としていると、広くても浅い知識ではないかと思われてしまい、アピールできないという現象が起きているのです。それよりも、この分野には非常に強いとか、私の専門分野はこれです、というようにピンポイントで提示してしまうほうが、聞きたいと思っている人に強くアピールできるのです。なぜかというと、ピンポイントで示されると、「あっ!これはオレのことだ」「これって私のことだわ」と感じる人が必ず現れるからです。ピンポイントで示せば示すほど、「ある!ある!」、「そうそう!そうなんだ」となり、「この話、聞きたい!」となるのです。講師デビューにあたってのポイントは、自分の専門ジャンルやテーマを徹底的に絞り込むという視点です。

いたずらに範囲を広げず、あなただけの「オンリーワンのテーマ」を見つけ、そこに集中する。それが大切なのです。

鈴木誠一郎(すずき せいいちろう)
京都府生まれ。立教大学経済学部卒業後、日産自動車株式会社に入社。
同社にて28年間勤務し、営業部、マーケティング本部、経営企画部、地域戦略部、人材開発部などを経験。その後ビジネスコンサルタントとして独立。コンサルタント志望のビジネスマンをフェイスツーフェイスで支援する「オンリーワン・コンサルタント養成アカデミー」を主宰している
[taglist]

ページトップに戻る