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仕事
2018年08月01日

定年前後の人のための「講師デビュー」入門 vol.4

培った知見が大きな財産!

定年前後の人のための「講師デビュー」入門 vol.4 2018.08.01学ぶ・教える


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受講生の満足度が変わる!臨機応変に対応できるチカラ

これまでのビジネス経験を、講師として次世代のビジネスパーソンに伝えていく。定年後の働き方として、とても魅力的に見えますが、「どうしたらその道に進めるのかわからない」という方も多いと思います。本連載では、講師養成の専門家であり、『定年前後の人のための「講師デビュー」入門』の著者でもある鈴木誠一郎さんに、「講師への道」をナビゲートしていただきます。

連載も5回目を迎えました。今回は、講師として、いかに臨機応変にセミナーのさまざまな状況に対応していくかを学びます。受講者にとって、あなたが講師デビューする日かどうかは関係ありません。あなた自身が冷静にその場に臨めるようにするためにも、また受講者が安心してあなたの話を聞ける状況を作るためにも、以下のノウハウを覚えておきましょう。

講師らしく見せる「視線の配り方」

講師体験が初めてであることを、受講者に悟られては信頼に関わります。悟られまいとして、また緊張するという悪循環に陥っては、目も当てられません。こうした悪循環に陥らないためのコツが、実はボディー・ランゲージです。「講師らしく」ふるまうことで、自分の緊張感をほぐし、かつ受講者から「講師デビュー」であることを悟られないようになります。動作から入っていくことには、大きな効果があるのです。

ボディー・ランゲージにもいろいろあります。例えば、参加者への視線、アイコンタクトのしかた、声の出し方、声のトーン、間の取り方、話している時の姿勢、表情など。それらの中でも、代表格といえるのが「参加者への視線の配り方」です。1カ所に視線をとどめるのではなく、ゆっくりと全体を見渡すように視線を投げかけていくことが大事です。とはいっても、講師デビュー直後は、緊張してしまい全体を見渡す余裕がないのも事実です。意識し過ぎていると言葉を見失ったり、忘れてしまったりしてしまうこともあります。最初は気がついたら全体を見渡すようにするということでいいと思います。場数を踏むうちにできるようになります。あまり神経質になる必要はありません。

アイコンタクトというのは、参加者の方々と視線を合わせることをいいます。アイコンタクトもデビュー当初は、あまり意識しなくても大きな影響はありません。慣れてくれば、大勢の方とアイコンタクトができるようになっていきます。ポイントとしては、1人3~5秒間くらいアイコンタクトをすれば良いでしょう。あまり長い間見てしまうと聞き手の方が緊張してしまいます。見た目にも、ぎこちなさが残ります。講師側からすれば、よくうなずいてくれる参加者を見ていると気持ちが安心してくるのですが、見過ぎていると妙な感じになってしまいます。アイコンタクトは、簡単そうにみえて奥が深いスキルでもあるのです。

いつもどおりが1番!声の出し方のポイント

声の出し方は、人それぞれでいいのですが、基本的には腹式呼吸をしながら、へその下の丹田という部分から意識的に声を出すと落ち着いた重厚感のある声が出るといわれています。私も試みていますが、あまり気にし過ぎない方がいいように思います。いつもの声でいいのです。同じように、声のトーンは低い方が聴きやすく印象に残りやすいと言われていますが、これもあなた独自のトーンでいいのです。いつもと違う自分で話そうとすると、緊張してミスが出てしまい、焦ってしまうことから、結果的にボロボロになりやすいものです。いつもの自分の声で話しましょう

間の取り方も同じで、いつもの自分の話し方で大丈夫です。場数を踏んでくることで、ポイントを強調する際の間の取り方も一呼吸置くようになってきます。聞き手の表情を見ながら自然に話ができるようになるからです。最初から完璧を目指す必要はありません。あなたのいつもの話し方こそが、オリジナリティーなのです。

話をしている時の姿勢は、デビュー時から注意が必要です。やはり、常に背筋を伸ばしていることが大切です。猫背は自信が薄いように見えてしまうので気をつけるべきだと思います。背筋が伸びた良い姿勢であれば、誰の目から見てもちゃんと講師に見えるものです。

表情は、基本的には、終始にこやかで笑顔がポイントです。誰も難しい顔をした人から長時間話を聞きたいとは思わないもの。サラリーマンを長年やってきていると、顔の表情がすぐにこわばってしまいがちの方がいらっしゃいます。「オレもそうかもしれない」と思う方は、鏡の前で笑顔の訓練をする必要があると思います。講師にとっては、表情も仕事のうちなのです。

印象に残る上手な「締めの言葉」はこう言う

締めの言葉も大切です。参加者の方々に、その日の印象を深めてもらうと同時に長く記憶してもらうためのものだからです。私の場合は、「今日は、皆さんにコミュニケーション上の武器をお渡しいたしました。これで今まで以上に人とうまくやっていくことができると思いますので、ぜひ忘れないで使ってください。ご清聴ありがとうございました。」と言っています。すると、参加者の皆さんが、あたり前ですが一斉に拍手をしてくれます。これでおしまいとなるわけです。そして、たいていの場合、個人的に質問されに来る方がいます。皆の前では言いづらいということがけっこうあるものです。このように質問をしに来る方は、真摯な姿勢の方が多くとてもうれしく感じます。

また、休憩時間中に参加者から話しかけられるとうれしいものです。セミナー中は、どちらかというと講師が一方的にしゃべっていることが多いだけに、質問以外で話しかけられると参加者と打ち解けられているという実感が持てるからだと思います。講演やセミナーが終わってから、参加者から、「今日の話は、役に立ちそうです」とか、「面白かったです」とかの感想を言われることもあります。すると、自分が話したことは参加者にとって意味があったと、あらためて自覚できます。というのは、いつも今日のセミナーで伝えることは、これで良かったのだろうかと思いながら伝えている部分があるからです。現時点ではベストだと思うことを話し、資料も作るのですが、それでも絶対の自信はありません。もっとわかりやすい言い方、もっといい資料があるかもしれないと常に考えています。だからこそ、声をかけられた日は、帰りの電車の中で充実感を味わうことができます。

受講生から質問されたらどう返事をする?

初めて講師デビューする場合に、質問がたくさん来たら答えられるか心配だなと思われるかもしれませんが、実際は質問が来ないと逆に不安感にかられます。質問があるとなぜかほっとするのです。それは参加者が真剣に聞いてくれていたという証しにもなるから。自分の話は参加者にとって意味があった思うことができるからだと思います。ですから、質問が来ることを恐れることはありません。

「ご質問のある方は、どうぞ」と言います。すると手が上がって質問が始まります。その際のボディー・ランゲージは、私の場合は、次の要領で行っています。その質問者に対して、顔だけでなく身体全体を向けて質問内容を聞きます。逐次、「はい」とか「そうですね」とか、うなずいたり相づちを打ったりしながら、質問者の話をよく聞いているというメッセージを伝えるようにします。たまに質問の内容がわかりにくいことがありますので、その際には、「~と、こういう質問でよろしいですか?」と質問者に確認するようにしています。場合によっては、質問者が質問しているうちに、いくつも思いつくままに質問したり、話が長くなって何が1番聞きたいのかが曖昧になったりすることがあるからです。このように質問内容を確認すると、質問者にとっても自分が受け入れられたと感じ満足すると同時に、講師に対しても親近感を持ちやすいものです。

次に、質問内容について、会場の参加者全員で共有します。それは、「今、○○さんより、このような質問がありました。」と会場に向かって伝えるのです。この時、質問者の名前を言うかどうかはその時々の状況で違いますが、ネームプレートで名前がわかる場合には言うようにしています。やはり名前を講師から言ってもらうことで質問者の満足感が違ってくると思います。続いて、会場の参加者全員に目を配りながら、身体も向け直しながら質問に答えます。簡潔に短く答えることがポイントです。詳しく答えを言い始めると、あれも言わなくては、これも言わなくてはとなってしまいます。そして聞いている側もよくわからなくなってしまうと思うからです。会場の参加者の表情が、「ああ、そういうことか」というようにわかった感が出ていることを確かめたら、今度は質問者に対して疑問が解けたどうかを聞き返します。「これで良かったでしょうか?」とか、「今の答えでおわかりになったでしょうか?」と言っています。この質問者に対する最後の確認は大切です。この聞き返すことがないままに、次の質問を受けてしまうと、質問者の気持ちが一段落しないことから、何か物足りなさが心に残ってしまうからです。これは私自身が講演会などに参加して、質問した際に受けた感覚です。しっかり確認して講師側も気持ちがスッキリしてから、そのあとで次の質問を受けるようにします。

以上、あなたが講師として初めて演台に立つ際にイメージトレーニングしておいた方が良いと思うポイントを述べさせていただきました。なんでも準備しておけば、緊張しないであがりにくくなるものです。

講師デビューは気づきの宝庫!「こうすれば良かった」は次回に生かす

最後に、一足先に「講師デビュー」した私自身の体験から述べさせていただければ、これだけの準備をバッチリしていたとしても、最初の講師の場では、いろいろとあるものです。私の場合は、終わってみればボロボロでした。例えば、それは次のような点からでした。

  1. ・自分が、うまく言えなかった言い回しがあった
  2. ・自分で、ここはうまく説明できないなと思った
  3. ・ここは少し補足が必要だと思った
  4. ・スライドの順番を逆にした方がいいと思った
  5. ・この「事例」では、わかりにくいのかなと思った
  6. ・ちょっと気になった単語や文があった
  7. ・こんな資料があればいいなと思った
  8. ・ここに新たなスライドを入れた方がいいと思った
  9. ・このスライドは、わかりにくいと思った
  10. ・参加者の「ノリ」が良くなかったところがあった
  11. ・参加者が意外と「盛り上がった」ところがあった
  12. ・補助資料やアセスメントを出すタイミングを間違えたと思った
  13. ・この辺りで一度理解したかどうかを確認した方がいいと思った
  14. ・この箇所で、この話はちょっと違うなと思った
  15. ・思ってもいないような質問が出た・・・等々

こんな感じで、やっている最中にいろいろ思ったり、気づいたりすることがあります。最初だったので、緊張して焦っていたこともあるかと思いますが、これらを次回に生かすことで、よりわかりやすく内容の濃いものとなっていくのだと思います。ポジティブ思考でいえば、最初の講師デビューの場というのは、「気づきの宝庫」といえるかもしれません。

いかがですか?ご自分の「講師姿」が、さらにイメージできてきたのではないでしょうか。最初は大変かもしれませんが、場数を踏むことで徐々に臨機応変に対応できるようになります。そのためにも、さまざまな想定をして、どのような態度で臨むかを考えておくことが大事なのです。

鈴木誠一郎(すずき せいいちろう)
京都府生まれ。立教大学経済学部卒業後、日産自動車株式会社に入社。
同社にて28年間勤務し、営業部、マーケティング本部、経営企画部、地域戦略部、人材開発部などを経験。その後ビジネスコンサルタントとして独立。コンサルタント志望のビジネスマンをフェイスツーフェイスで支援する「オンリーワン・コンサルタント養成アカデミー」を主宰している
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