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仕事
2018年07月31日

定年前後の人のための「講師デビュー」入門 vol.3

培った知見が大きな財産!

定年前後の人のための「講師デビュー」入門 vol.3 2018.07.31学ぶ・教える


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緊張しない秘訣!イメージトレーニングをしてみよう

これまでのビジネス経験を、講師として次世代のビジネスパーソンに伝えていく。定年後の働き方として、とても魅力的に見えますが、「どうしたらその道に進めるのかわからない」という方も多いと思います。本連載では、講師養成の専門家であり、『定年前後の人のための「講師デビュー」入門』の著者でもある鈴木誠一郎さんに、「講師への道」をナビゲートしていただきます。

講師としてデビューする際には、ほとんどの人が緊張してしまいます。連載4回目では、実際のセミナー場面をイメージしながら、いかにして緊張せず、無事に講師としてのスタートを切るか、そのノウハウをお伝えしたいと思います。

講師として立つイメージトレーニングをしよう

これまで、会社で会議の司会進行やプレゼンテーションを行った経験はあっても、初めて会う大勢の人を前にして話す、という経験はないという人がほとんどでしょう。豊富な経験を積んできた人でも、初講師の日は緊張してあがってしまいます。私の場合もそうでした。会社の中で人前に立って話す際に緊張しても、同じ社内の同僚が聞き手ですから、はじまってしまえばいつもの自分で話すことができます。しかし、講師となるとまったく別でした。聞き手の方々は、その日に初めてお会いする方ばかりで、当たり前ですが何かを得ることを期待している人たちばかりです。そこで、これから講師デビューするあなたの参考になればと考え、私が講師デビューした頃にいろいろと経験したことをお伝えします。

以下の私の経験を参考にして、あなた自身でイメージトレーニングしてみてください。事前にイメージトレーニングをしておくことは、必ずその時に役に立ちます。

自分がもし演台に立ったら?

私が、講師として初めてマイクのある演台に立ったのは、あるNPO団体のコーチングセミナーでした。参加者は20人ほどで、ほとんどの方がビジネスマンです。まず司会者の方が私を紹介してくれて、いよいよ受講者の前に出ていきました。初めて見る方々の真剣な視線が、あちこちから刺さるように注がれていることを感じて、一瞬たじろいだことを覚えています。「この講師はどんな人だろう?」というような好奇の目でたくさんの人から見られていたことからすっかり緊張してしまい、数秒間、第一声が出てこなかったのです。頭の中では、こう言わなくてはいけないとわかってはいるのですが、「え~・・・」と言ったまま、言葉が出てきません。その間、真正面の参加者の方の目をじっと見つめていたように思います。「何を言うのか、興味津々の目だな」と感じたことを今でも覚えています。自分が注目され、これだけの人間から一斉に見られるということはこういうことなんだな、と思いました。その時の数秒間が、とても長く感じたことは忘れられません。

ですから、初めて講師として立つ時、私のような状態に陥らないためにも、イメージトレーニングをしておくことをおすすめします。イメージトレーニングでは、大勢の参加者の目が自分に注がれている場に立っている状態を思い浮かべてください。参加者はいずれも好意的な目で見ていてくれることをイメージすると、気持ちが動揺しないで言葉が出てくるようになります。

緊張しない第一声の発し方

講師デビューで、言葉が出ないという失敗をしてしまったことから、次の時は、第一声で言うべき言葉を説明資料の欄外に書いておきました。「皆さん、こんにちは」という、わざわざ書かなくてもいいような文言です。いざとなると頭が真っ白になって、また言葉が出てこないと怖いと思ったので、たったこれだけですが、必ず見て確認して言葉を出そうと考えたのです。第一声さえよどみなく口から出れば、後の言葉がスムーズにつながって出てきます。出だしさえうまくいけば、あらかじめ用意していた話の内容を忘れても手元の資料を見ればいいだけのこと。ここまでくれば、もう心配はありません。また、焦ってしまうと目の前に書いてあっても探してしまうという事態になります。第一声の言葉は、説明資料の欄外に「目立つ」ように書くようにしましょう。

第一声は、「本日はありがとうございます」でもいいですし、「今、司会の方よりご紹介していただきました○○と申します」でもいいです。あなたが一番言いやすい言葉にしましょう。凝ったことを言おうと思ったり、ふだん使ってないような言葉を言おうとしたりすると、とっさに口から出てきませんので注意したほうがよいでしょう。第一声さえ出せれば、たとえあがってしまっていたとしても、いつもの自分を取り戻すことができます。もの足りないと思うなら第二声で続けて言えばいいのです。

興味を引く!スムーズな自己紹介のやり方

自己紹介は、参加者と講師との間の親近感を瞬時に作っていく上で、大変重要なものです。特に参加者は、初めて会う講師に対して、「一体どんな人だろう」「どんな話をしてくれるのだろう」と、好奇心いっぱいです。最初の自己紹介で、参加者とうまく感情の交流ができれば、そのあとの講演やセミナーは不思議なくらいうまく流れていくもの。一体感が感じられるからだと思います。

私の場合は、まず経歴を伝えています。私は講師になる前は一般企業に勤務していたので、その企業で、どんな部署で、どんな経験をしてきたかを言います。大ざっぱではありますが、経歴がわかれば講師の人となりがある程度はわかってもらえると思うからです。次に、なぜ私がコーチになったのかを話すようにしています。これは、私がそれまで勤めていた会社を早期退職して講師になったことと関係してきますので、毎回必ずお話しするようにしています。ちょっと長くなりますが、話すのは以下のようなことです。

私がコーチになったのは、当時、企業にいた時に社員研修の一環として「コーチング研修」に参加したのがそもそものきっかけでした。それまでは、コーチングという言葉も聞いたことがありませんでした。

一般的に、企業でサラリーマンを何十年とやっていると、いろいろな場面での「経験知」ができてくるものです。このような場面では、こういう態度を取ったほうがいいだろうとか、こんな時には、このような言葉を相手にかけるべきだろうとか、はたまた、こんな時には相手をまず認めてあげることがいいだろう、という一種の人間関係上のノウハウみたいなものです。でもこれらのノウハウは、自分の経験からそのように思っているだけで、これという確かな根拠はありませんでした。しかし、社員研修でコーチングセミナーを受講している中で、講師をしていたコーチの話を聞いているうちに、次々に自分の経験知として使っていたノウハウに関する、心理学的根拠が明らかになっていったのです。目からウロコという感覚でした。この時、この研修は面白いと感じました。コーチングというのは、もしかすると自分に合っているのかもしれないと思い、その後、個人的にコーチ・トレーニング・プログラムを受講したのです。

ここまで話すと自己紹介の時間が15分くらいと少々長くなってしまいますが、参加者の表情が変わるのがわかります。なんとなく親近感を持ってくれたように感じるのです。自己紹介において、あなたも、なぜ自分が講師になったのかを、参加者に伝えるようにしてみてください。人となりを理解する参考となり、あなたに親近感を抱いてくれると思います。他に、あなたの人となりを伝えやすい経験やエピソードがあれば、それもいいでしょう。

大切なことは、最初に講師の側から「心を開いていく」姿勢です。講演でもセミナーでも初めて会って数時間を過ごしたあと、また別れていくわけですから特に個人的なことをオープンにする必要はないのかもしれません。でもせっかく来ていただいた参加者との関係を築きたい、深めたいと思うのであれば、自分から心の内を見せていくということがとても大切だと思います。

いかがですか?少しご自分の講師姿がイメージできるようになりましたか? 次回は、さらに講師らしく見えるためのボディーランゲージの方法や質問の受け方などをお伝えします。

鈴木誠一郎(すずき せいいちろう)
京都府生まれ。立教大学経済学部卒業後、日産自動車株式会社に入社。
同社にて28年間勤務し、営業部、マーケティング本部、経営企画部、地域戦略部、人材開発部などを経験。その後ビジネスコンサルタントとして独立。コンサルタント志望のビジネスマンをフェイスツーフェイスで支援する「オンリーワン・コンサルタント養成アカデミー」を主宰している
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