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2018年07月31日

教える場を提供するNPOの事例

教える場を提供するNPOの事例 2018.07.31学ぶ・教える


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認定特定非営利活動法人コアネット

学校での出前授業や中小企業支援現場での経験知活用まで。さまざまな「教える」機会を設けている団体の事例をご紹介します。

コアネット発足の経緯

コアネットは企業OBを中心とする、ひとづくり・ものづくり支援のNPOです。TDKや清水建設、日本通運、東芝といった企業OBたちが集まり、2000年に発足しました。Co-Operation of Retired Executive Networkを略してcore-net(コアネット)。企業で培った知恵を、中小企業をはじめとする社会の諸活動の支援に使えないか。このような思いで設立されました。

その中で、中小企業支援と同じく初期に開始したのがキャリア教育支援をはじめとする子どもの育成です。当時導入が始まっていた「総合学習の時間」について、神奈川県で先生方の勉強会があり、そこに参加しながら企業経験者の語るキャリア教育ができないかと模索したのが始まりです。後になって、製造業OBが多い団体特性を活かした「ものづくり教室」の企画も立ち上がり、試行錯誤を重ねて実施が始まりました。

10年以上続いているのは、みんなの向いている方向が同じだから

(副代表理事・事務局長宮崎氏の話から)
現在、コアネットの活動は出前授業やものづくり教室をはじめとする教育支援活動と、販路開拓や人材育成支援をはじめとする企業支援活動を中心に行われています。会員数は100人強。7割が関東、3割が関西での活動になります。

「もう17、8年活動が続いていますけれども、やりたいことが自由にできることと、互いに協力し合うっていう気持ちを持っていることが継続の理由ではないでしょうか。一つひとつのプロジェクトはスムーズに行かないこともあるんですが、最後にはみんなでやろうという方向にまとまります。向いている方向が同じだからでしょうか。現役時代のような煩わしい人間関係がないことも、よいのかもしれません」と副代表理事・事務局長の宮崎氏は語ります。宮崎氏自身、機器メーカーで定年までつとめたあと、コアネットの活動を始められました。

「私自身は、定年後はのんびりしたいなと思っていたんです。そこへ人を介してコアネットのメンバーから、高校でキャリアの話をしてくれないかという連絡が入ったんです。これがきっかけで入会しました。気軽にやれるなというつもりではあったのですが、今のような事務局立場になったら全然趣味なんかしている時間がない。出前授業や中小企業支援一つひとつに調整や準備を要しますし、参加するメンバーの募集や人数調整も生じる。わりとパソコンの前で連絡・調整仕事をする時間が多いです」。

忙しいが楽しんで活動できる出前授業

(理事・尾上氏の話から)
出前授業のプロジェクトリーダーを務める理事の尾上氏も同じく、毎日が結構忙しいと話す。

「私はものづくり経験を活かした活動ができるということに惹かれて入ったのですが、今はキャリア教育を主とする出前授業に主に関わっています。会員メンバーが自分の経験を元に職業講話を話すスタイルもありますが、最近は一方的に話すよりもグループワークを取り入れたスタイルが主流になっています。学校から話が来たら先生と打ち合わせをし、目的に合った設計をします。そしてグループワークなら複数の会員が入れるようにメンバー募集・調整し、当日は学校に出向いてサポート役になります。」

「私はもともと補聴器関係の会社で仕事をしていました。定年を迎えたあと、1年嘱託として雇用延長したのですが、嘱託はどうしてもめいっぱいやりたいことができないんですね。補聴器をもっと一般に広めたいと思っていたのですが、会社という枠を離れてもできることはないかと調べ、東京雑学大学というところで講座をもつことになりました。そこから縁がつながり、子どもに伝える機会がありそうなコアネットにも入会することになったんです。今も4団体掛け持ちでやっているので嘱託のときよりはるかに忙しいのですが、自分のペースで進められるのでストレスもなく、楽しんで活動しています。」

子どもと一緒に自分も楽しむ、これが長く続く秘訣

(理事・三沢氏の話から)
ものづくりや理科実験教室のプロジェクトリーダーを務める、理事の三沢氏は、他の2人とは異なり、自ら広告代理店を経営していた。定年は特にない立場だ。

「友人がコアネットメンバーで、あるときキャリア教育でマスコミ系の話ができる人がほしいと連絡してきたんです。文系人間なのですが、広告代理店をやっていた経験のせいか、アイデアを出すのが好きなんですね。ものづくりや理科実験教室は、基本的にお金をかけずに身近な材料を使って何ができるかが知恵の出しどころなのですが、そういうネタをよく考えています。」

「身近な材料で組み立てたら電気がつくようになったり、万華鏡ができちゃったり。子どもたちがものすごく喜んでくれるんです。でも実はこちらも楽しんでいるんです。自分たちが楽しまないと続かないでしょうね。」

経験や知恵を編集して「教えられる」ものにする

プログラムは年間100本ほど行っているため、さまざまなことが並行して進みます。問い合わせや依頼が来るとまず幹部メンバーが学校で打ち合わせをし、プログラムを確定。参加講師を募集してレジュメ作成や準備を進めます。ものづくり教室の場合は一人ずつ体験できるように備品を小分けして準備するなど、細かい事前作業が欠かせません。

「僕が出している企画はほとんどインターネットに載っているんです」と三沢氏は語ります。「ただ、そのままでは使えない。ストーリーをつけたり、手順を明確化したり。そういう『編集』によって、教えるための元をつくっています。一方で我々が注意しないといけないのは、職業講話のような話をするとき。昔の話であれ、経験談は一番反応がよいので、求められたら会員の人に出向いてもらっています。一つだけ注意しているのは、子どもに価値観を押し付けないことですね。」というように、ものづくり教室であれキャリア教室であれ、目的にあわせた準備が必要になります。

教えるだけじゃない、学ぶ場も自然と増える

そのためには、相手側のニーズを理解することが第一だ。「コアネットの活動をしていると、毎日何か勉強する機会があります。学校関係のことに関わると、今の教育システムや現場での授業実態などを知らないと、先生との話がかみ合わなくなってしまいますよね。おかれた状況で必要になった勉強を体当たりでしている感じです。こういう姿勢は、会社員人生のなかであまりなかったかもしれません」と尾上氏は話す。

自分一人で教えるばかりではありません。ものづくり教室の運営は、学年全体を一度に実施する場合もあります。1クラス2人ずつ会員が入り、8クラス同時実施というようなことも起こるんです。こういうメンバー同士、月1回の勉強会などを通じ、教える手順や新ネタを学び共有する機会を設けています。終了後には必ずアンケートをもらっていますが、好評の声が多いといいます。その集計は学校にもフィードバックし、意図した成果が出たか、先生方からの感想も聞くようにしています。

知恵や経験をどれだけ進化させ、新しいチャレンジを支援できるか

学校現場での活動は、企業支援活動にも役立ちます。自治体から受託した中小企業支援事業のなかでは、個別企業支援や生産効率や品質向上の研修提供などを行っています。このようなときに、自身の経験をふりかざして一方的に提供しても、中小企業側の求めていることとずれてしまうことがあります。相手のニーズをしっかりとらえ、自身の経験を「編集」して伝えることが、企業支援でも共通しているといえるでしょう。

「結果的に企業OBの活躍の場をつくったともいえますが、コアネットは産業界における経験で培ったノウハウや知識を、社会サービスとして新たに提供したいという思いからつくられた団体です。これまでの経験や知恵をどれだけ進化させ、新しいチャレンジを支援することができるかが、我々自身にも求められていると思っています」と創業メンバーの方も語ります。

社会を支える気概が活力を増進

コアネットはNPOですが、団体としての持続的な収益は出し続けています。自治体の受託による企業支援や中小企業支援コンサルティングなどによって支えられているのです。教育支援も手弁当ばかりでありません。教育委員会への働きかけや企業スポンサーなどの協力を得ながら継続しています。

「学校やコンサルティングで稼働した場合は、必ず日当を出しています。ボランティアを前提としたNPOなので、収入源になるものではありません。しかし完全な無報酬だと継続は難しくなります。ささやかでも日当が出ることで、責任ある仕事になると思っています」このように、明確なポリシーをもって団体運営されていることが分かります。

「定年退職者に限っているわけではないですが、結果的に会員の年齢は高めになっています。ただ、実際来てくれている会員の方を見ると、定年退職しても積極的に外へ出て、いろんな所でいろんな人と交流することが必要なのだと感じます。現役時代は会社を支える意識だったかもしれませんが、これからは我々が社会を支えるんだという気持ちになれたら、いろんなチャンスが見えてくると思います。動くほうが健康にもよいですしね(笑)」と宮崎氏、尾上氏、三沢氏は口々に語ってくれました


団体紹介:認定特定非営利活動法人コアネット
※会員も随時募集しています。下記よりメールでご連絡を受け付けています
■ 東京本部 / ■ 関西本部


インタビューご対応者
副代表理事・事務局長 宮崎顕作様
理事・出前授業プロジェクトリーダー 尾上正嗣様
ものづくりプロジェクトリーダー 三沢光弘様

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