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仕事
2018年07月23日

「定年自由ワーカー」でローリスク起業しよう!

「定年自由ワーカー」でローリスク起業しよう! 2018.07.23働く


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悠々自適でのんびり盆栽でも楽しみながら暮らす……。これからの時代、そんな定年後の生活を送ることは、なかなか難しそうです。その先の長い人生を考えれば、働き続けること、定年後の収入源を開発することは、もはや不可欠なのです。ここでは、「自分の力で生きていく」ことをめざす方のために、「定年自由ワーカー」という生き方を紹介していきたいと思います。

定年後も収入を得るための選択肢、再就職の壁

定年を迎え、長年お世話になった会社を辞した後も、やはり働き続けたいという人は多いでしょう。「自分は何とか再就職できるのでは?」と楽観的に考えている人も少なくないでしょうが、きびしい現実に直面するとがくぜんとします。

筆者は定期的に東京・飯田橋の「東京しごとセンター」(若者・女性・シニア向けの就職支援を行う公的な施設)を見て回るのですが、人手不足といわれる都会でも、シニア世代の事務系ビジネスパーソンの求人はごくわずかです。しかも正社員ではなく、非正規で月額10万円代という給与水準の募集が多いのです。定期収入はもちろん大切ですが、そんな待遇で定年後も「宮仕え」を継続することは、自分にとって本当にいいことなのでしょうか?

自分で自分のスケジュールを決められるうれしさ

筆者は100名を越えるシニア起業家にインタビューしてきました。「大手メーカーを退職し自宅とシェア倉庫を使い、希少楽器の修理で起業したIさん」「震災支援がきっかけで手芸の特技を

生かして起業したさんOさん」「介護のためメーカーを早期退職、外商として起業したUさん」「金融機関を退職し、財務コンサルタントとして独立したSさん」etc.

みなさんに、「起業して何が一番よかったですか?」と聞くと、ほとんどの人が「自分で自分のスケジュールを決められること」と答えます。組織を離れ、自分の力で独立・起業することは精神的自由をもたらしてくれるのでしょう。

ハードルの高い「起業」という選択

そうはいっても、長年安定した環境で会社勤めをしてきた人にとって、「起業」はとてもハードルが高く、リスクが大きいことと感じるのではないでしょうか?

一般的に「起業」というと、ビジネスモデルを構築して、投資をし、資金を集め、事務所を開いて人を雇い、成長していく、そんなイメージではないかと思います。もちろん、そういう選択もすばらしいです。会社の方針でやりたくてもやれなかった事業を、定年後、会社のしばりを離れて広く出資を募り、事業化する。夢のある話です。キッザニア(子ども向け職業体験テーマパーク)を日本に展開し、成功に導いた住谷栄之資(すみたに・えいのすけ)氏は、定年退職後、資金を集めて起業し、成功に導いた方であり、その代表格といえそうです。

しかし、確たるビジネスモデルがないのに、いきなり起業するというのはかなり困難な道です。「再就職は難しい」「起業も難しい」…では、どうすればよいのでしょうか?

「定年自由ワーカー」というスタイルの提案

「リスクはなるべく背負わず、定年後自由に働き収入を得たい」そう願う人にお勧めしたいのが、「起業」にこだわらない「独立」のワークスタイルです。定年後は組織に拘束されず、自分ひとりで、そして自由なスタイルでお金を稼いでいく。この連載では、そんな定年後の生き方を「定年自由ワーカー」と呼びます。

「定年自由ワーカー」は自由であることが前提です。投資などの大きなリスクを負いません。また、できるだけ経済的に拘束されないために、事務所やスタッフなどの固定費の負担を持たないようにします。つまり、いつでも引き返せるようにするのです。

うまく行きそうであれば、はじめて資金を投入し、組織を作ることを検討します。“スモールスタートして、ローリスク、ローリターンで月々収入を得る仕組みを作り、機会があれば拡大をはかる”というスタンスが一番現実的ではないかと思います。

そんな方法が可能になったのは、インターネットの普及と、シェアビジネス(所有するのではなく必要な時に借り上げる仕組み)の拡大のおかげです。事務所を家賃の高い都心に開かなくとも、月々安い費用でレンタルオフィスが利用できます。事務作業も代行してもらえるようになりました。法人格をもちたい時は、レンタルオフィスに登記すればいいし、郵便物の受け取りや電話の代行すらまかせられます。そして、ビジネスがうまく回りだし、月々安定した収入が得られるようになった時点で、次のステップを検討すればいいのです。

老後資金にはなるべく手をつけない

「退職金など一定の資金はあるから投資してもいいのでは?」そう思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、できるだけ退職金は「老後資金」として手をつけないでおいた方がいいと思います。この先、何があるか分からないからです。

これからこの連載で述べていきますが、定年後は、「定年自由ワーカー」としていろんな収入源を開発しつつ、自分が一番やりたいことを事業にしていくことをお勧めしています。

いろんな収入源を確保していただきたいのは、リスク分散のためです。自分がやりたいことがお金にならなかった時にも、やはり生活費は稼がなくてはならないでしょう。やりたい事業の他にも、現金を稼ぐ手段を確保しておくと安心です。

月100万ではなく、月10万をめざす

現行の法制度で、年金が約束通り支払われるとすれば、65歳から年金を受け取ることができるようになります。しかし、それだけでは足りないと感じる方が多いのが現実。シニア起業家や独立ワーカーは「月10万円の安定収入を得て、少しゆとりがもてれば」そんな気持ちでいる方が多いようです。

「定年自由ワーカー」は、いきなり月何百万円と稼ぐのではなく、月10万円安定的に稼ぐことをまず目標にしたらいかがでしょう。今まで会社で何億、何十億の金額を取り扱った人にとっては小さな目標だと思うかもしれませんが、会社の看板なしに、自分の力だけで月10万円稼ぐことができればたいしたものです。

まずは身近な役所で情報収集することから始めよう

大多数の方は「自由ワーカーになれといわれても、どうしていいか分からない」という感想だろうと思います。これまで経験のないことですから、無理もありません。

そんな方にお勧めしているのは、まず「身近な役所に行ってみること」です。

行政は、そうした「事業者」になることを歓迎しており、以前では考えられないほど手厚いシニア起業または独立についてのサポートがあります。

まず、みなさんは自分の住んでいる自治体の「起業サポート制度」を調べてみてください。ホームページで調べてもいいし、直接役所の担当部署に問い合わせてもいいでしょう。だいたいどこの自治体も「創業支援窓口」を設けています。自治体の役所内に窓口があるか、商工会議所で受け付けている場合が多いです。市町村だけではなく、県単位で行っているところもあります。

民間でもシニア創業支援をうたっている会社はいろいろあります。もちろんよい会社もありますが、高額な参加費などを払う前に、一度公的なサポート制度を調べてからの方がいいのではないでしょうか。

自治体の創業支援サポートのさまざまなメリット

また、自治体の創業支援サポートを受けると、次のようなメリットがあります(あくまでも例ですが多くの自治体ではこのようなメリットが受けられます)。

  1. (1)創業時に必要な知識(事業計画や資金計画の立て方、マーケティングや販促方法など)のセミナーやスクールを無料または安価に受けられる。
  2. (2)その自治体で株式会社を設立する時の「登録免許税」が軽減※される。※法人設立時必ず支払わなくてはならない税金。半額になる場合が多い。
  3. (3)創業時の融資で限度保証額が増える。カンタンにいえば借りられる金額が増える。
  4. (4)自治体と提携するインキュベーション施設(起業者向け共同オフィス)を有利に借りることができる。

もちろん、行政機関だけですべてが解決する訳ではありません。しかし、何より大切なのは、動き出すことです。一人で悶々と悩むより、まず自治体の窓口に出かけたり、ホームページで情報を探したりするところからスタートしましょう!

藤木俊明
コンテンツ・メイカー / シニア起業ジャーナリスト。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。明治大学リバティアカデミー講師。経産省関東経済産業局登録マネジメントメンター。
金沢市出身。早稲田大学卒業後、リクルート、ぴあを経て、1991年有限会社ガーデンシティ・プランニングを設立。著書に『会社を辞めずにローリスクで独立・起業する』『ゼロから始める「1枚企画書」の書き方』他多数。
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