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仕事
2018年07月17日

企業参謀への道~中小企業への転身で輝く条件 vol.3

企業参謀への道~中小企業への転身で輝く条件 vol.3 2018.07.17働く


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信頼関係を構築するまで進言してはいけない

社長の右腕を求める中堅・中小企業に、大手企業や金融機関の出身者を企業参謀として派遣するサービス“番頭さん”。終身雇用制崩壊を背景に“番頭さん”の登録者数は増える一方だが、大企業で働くことと中小企業で働くことは異なる点が多い。企業参謀に必要な資質について“番頭さん”サービスを生み出した、ビジネスインテリジェンスの山村博文社長に伺った。

山村社長へのインタビューの第3回。失敗続きの番頭さんサービスだが、中小企業の特質を知るうちに、だんだんと成功のセオリーが見えてくる。今回はオーナー一族の信頼を得て、大成功をおさめた番頭さんの事例を紹介しよう。最初は「辞めさせてほしい」の一点張りだったが・・・。

焦ってもいいことはない

大企業から中小企業に転職する場合、まずはその企業ならではの日本語体系や行動体系に合わせることが重要、とお伝えしました。もうひとつ大切なのは、時間をかけること。それで成功した事例をひとつご紹介しましょう。

依頼企業は全国のショッピングモールなどで、女性に顔そりなどのサービスを提供する会社。社長は芸術家肌で理想を語る方。ナンバーツーは奥さん。実務的なことは、すべて奥さんが携わっています。

店舗スペースは3~5坪程度ですから、とても安く借りられます。それで瞬く間に店舗は増えて、売り上げも急増していきました。しかし急速な事業拡大でキャッシュが追いつかず、金融機関からの融資がうまくつかないという問題点を抱えていました。その上、理容師の定着率が低い。顔そりというのは、理容師の免許がないとできませんから人は財産。社長は毎日店を回って、女の子たちと酒を飲みながら励まして、なんとか辞めさせまいとしていました。そういった何重苦もあったところに、我々が番頭さんとしてご紹介したのは、ある外食チェーンを全国展開した立役者でした。

信頼を得てから改革に着手

ところが、実際に番頭さんが入ってみると、内部管理がめちゃくちゃ。金融機関や商業施設の店舗開発担当者から資料を要求されても、まともに対応できないありさまでした。番頭さんからも紹介直後から「あんな内部管理ができていない会社に行けません」「もう辞めさせてください」と懇願されました。しかし我々は「お願いだから、しばらく待ってみてください」と頼み込みました。「奥さんがあなたを信頼するまで、大きな成果は出さなくていいからコツコツやってください」と。それで、番頭さんも小さな成果をコツコツと積みながら、じっと時を待った。

そうすると半年過ぎたあたりから、奥さんの信頼感がどかんと上がった。心から相談されるようになったのです。そのときに初めて番頭さんは「こんな改善をしませんか?」と奥さんに打ち明け、これまでため込んできた問題点の改革に手をつけ始めたのです。

その後、番頭さんが赴任したときは60店舗で四苦八苦していた会社が230店舗以上となり、理容師を育成する学校まで作った。ニューヨークで有名な美容院と提携までしてしまった。結果的に大成功をおさめたのです。勝因は他でもない「信頼を得るまでは進言するな」ということです。

好きな人だから話を聞く

大企業出身者が中小企業を見ると、問題点の5個や10個はすぐに言えます。しかし「ここがダメです」「そこは問題です」というのは、いくら正しくてもオーナー一族に対する否定になります。「お前ら何しているんだ、馬鹿野郎」と言っているようなもの。それを入り口で言ってしまうと、えらいことになる。オーナー一族の信頼を得るまでは絶対にやってはいけないのです。はじめに関係ありき。関係を作ってからでないと、人は何も聞いてくれません。好きな人が言っているから受け入れるのです。

経費削減でコツコツ成果を上げる

信頼を得るまで時間をおくことは重要ですが、その間に何もしないのもよくありません。何もしないと周りの社員やお局さんから「あの人は給料をもらうだけで役に立たない」と言われてしまいます。だからこの番頭さんの場合も、経費削減など何か小さな成功を積み上げては、それを奥さんの手柄にしていた。そうやって関係を構築しながら信頼を得ていきました。このプロセスをきっちりと踏んだからこそ、改革が進んだわけです。

ただし経費削減はやりすぎてはいけません。特に人件費は絶対に削ってはいけない。やるとしたら自分の給与相当額くらいをカットするのが理想的ですね。

山村博文
株式会社ビジネスインテリジェンス代表取締役。
関西学院大学卒、金融機関勤務。主に企画部門、マーケティング部門に在籍。韓国初の民間銀行である「新韓銀行」設立準備委員。02年に株式会社ビジネスインテリジェンス設立、大企業OBを中堅・中小企業に紹介、派遣する“番頭さん”サービスを専業とする。
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