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仕事
2018年07月13日

企業参謀への道~中小企業への転身で輝く条件 vol.2

企業参謀への道~中小企業への転身で輝く条件 vol.2 2018.07.13働く


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社長が喜ぶ優秀な人材ほど、うまくいかない

社長の右腕を求める中堅・中小企業に、大手企業や金融機関の出身者を企業参謀として派遣するサービス“番頭さん”。終身雇用制崩壊を背景に“番頭さん”の登録者数は増える一方だが、大企業で働くことと中小企業で働くことは異なる点が多い。企業参謀に必要な資質について“番頭さん”サービスを生み出した、ビジネスインテリジェンスの山村博文社長に伺った。

山村社長へのインタビューの第2回。中小企業に大企業OBを番頭さんとして派遣し始めるが、ことごとく失敗。社長が「紹介してくれてありがとう」という優秀な人ほどうまくいかないのだ。その理由を中小企業の社長たちに聞いてみると、だんだんと問題点が明らかになっていった。

言葉が全く通じていない!

中小企業の鈍化は外部人材を入れると回復することは、前回お話した通りです。その頃、金融機関から外部人材を入れた会社は、特に成功していました。

そのときに我々が思ったのは、これは今流行のCFO(Chief Financial Officer=最高財務責任者)じゃないか、ということ。オーナーがいて、財務の実行責任者はCFOだよね、と。財務ならCFO、ウエブならCIO(Chief Information Officer=最高情報責任者)、そこで我々は東京の外資系の会社をまねして、ものすごくしゃれたパンフレットを作った。そして、それを持って1000件のセールス訪問を行いました。しかし、見事に一件の問い合わせもありません。その時点では、中小企業に対する理解がまだまだ浅かった。

なぜ失敗だったかというと、まずCFOやCIOを売るというのは「責任者クラスの人材はいりませんか?」ということ。そもそも中小企業のオーナーは「責任者クラスの人間が必要だからくれ」とは言いません。もう一つは「CFOを紹介します」と書いていたら、それを見た社長や現場の責任者からは「CFOって何?」「円盤か?」って。言葉が全く通じていなかったんです。それでも税理士事務所や金融機関を通じて、注文は来ていましたので、そういった責任者クラスの人間を派遣していました。でも、それもことごとく失敗するんです。

例えば、ある中堅商社が中国マーケットに入りたいということで、中国に長けた人を求めていたんですね。そこで、中国でコピー機市場を拓いた大手電機メーカー出身者を紹介しました。その方を紹介したら、社長に「こんな素晴らしい人が、うちみたいなところに来てもらっていいの?」と小躍りするくらい喜んでもらった。それなのに一週間後に社長から「明日から来なくていいと言ってくれ」という電話がかかってくる。そういうことが次々と起こる。社長が「ありがとう」といった人ほど失敗するんです。

仲間4人で起業することを決意

コールセンターと銀行の窓口、外交と連動することで、シームレスにお客様に対応することができて、非常に大きな成功をおさめました。たった8~10人のコールセンターの契約金額が46店舗で受け入れる預金を上回るという驚異的な事態を生み出したのです。

ところがその後バブルが崩壊し、我々の金融機関も倒産しました。そのときにコールセンターを作った4人が「我々のノウハウがあれば、どんな会社でも成功するはずだ!」と美しい誤解をしまして(笑)。2002年にコンサルティング会社、ビジネスインテリジェンスを作ったんです。

世にあるデータをマイニングしたり統合したりしながらストーリーを作り、マーケティングを行う。ビジネスインテリジェンスの社名の由来は、ここにあります。

そうはいっても、簡単に起業を決めたわけではありません。ものすごく悩みました。ヘッドハンティングが来て「これまでの給料の倍は出す」と言われたこともあります。心がかなりぐらつきましたが、仲間が「いっしょにやろう」と言ってくれた。それで起業を決意したものの、本当は不安で胸がいっぱい。これからどうしたらいいのだろうという感じでした。

大企業と中小企業の二つの大きな違い

そこで、いったいどうしてこういうことが起こるのか、何が問題なのか、中小企業の社長たちにヒアリングをかけていきました。そうしたら問題点が、だんだんと明らかになってきました。大きな問題点は二つありました。

一つは日本語体系が全く違うということ。大企業から出てきた人たちは日本経済新聞に出てくる、いわゆる日経新聞用語をバシバシ使う。大企業で“ガバナンス”といえば、何となくピンときますが、中小企業で言うと「何ですか? それ、おいしい?」となります(笑)。また「今のドル局面、どう思う?」といった話題も大企業では通じるかもしれませんが、中小企業では会社に影響があったとしても話題にはならない。日本語体系も違っているし、話題も論理的なことより、直感的なことのほうがいい。居酒屋で仕事談義をしたり、芸能人の話をしたり、ああだこうだ面白い話をしているうちに心がつながっていくところがあるのです。必要なのは経済理論より雑談力。身近にある会話から交流を深めていくことが中小企業では大切なのです。

それから大企業出身者は「中国を開拓したのは僕です」と、過去の自慢話をする。みなさん徹底してされますし、徹底していやがられます(笑)。

もう一つは「これ、私の仕事ですか?」というもの。大企業で人事部長といえば人事マター、財務部長といえば財務関連と一人一役ですが、中小企業だと総務人事経理部長といった感じで一人三役は当たり前。大企業では人事部長が戸締まりをすることはありませんが、中小企業では「このフロアの戸締まり責任者ね」と言われるわけです。それを「私、人事部長ですよね? これ、私の仕事ですか?」と言ってしまい、社長の逆鱗にふれる。仕事を拒否していることと捉えられるわけです。このケースは非常に多いですね。

ダメ組のほうが転職に向いている!?

これらの問題点から見えてきたのは、中小企業に適応するには、中小企業向けの日本語体系と行動体系を持たないと話にならないということです。最初に社長に「ありがとう」と言われる優秀なエリートほど、転職が難しいのはこのため。むしろダメ組のほうが、成功する可能性が高い。左遷させられて子会社、孫会社に行った人のほうが、中小企業やベンチャーでうまく力を発揮できるのです。

最近は傍流の会社の人が親会社のトップになる事例も増えてきています。今のように環境が変わってきている、世の中が一変しようとするときには、今までのパターンの人間では通用しなくなっているということでしょうね。

ですから番頭さんも、あまりエリートでない人のほうが、むしろ中小企業では成功するといえるのです。

山村博文
株式会社ビジネスインテリジェンス代表取締役。
関西学院大学卒、金融機関勤務。主に企画部門、マーケティング部門に在籍。韓国初の民間銀行である「新韓銀行」設立準備委員。02年に株式会社ビジネスインテリジェンス設立、大企業OBを中堅・中小企業に紹介、派遣する“番頭さん”サービスを専業とする。
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