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仕事
2018年07月12日

企業参謀への道~中小企業への転身で輝く条件 vol.1

企業参謀への道~中小企業への転身で輝く条件 vol.1 2018.07.12働く


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コンサルティング会社が“番頭さん”を始めた理由

社長の右腕を求める中堅・中小企業に、大手企業や金融機関の出身者を企業参謀として派遣するサービス“番頭さん”。終身雇用制崩壊を背景に“番頭さん”の登録者数は増える一方だが、大企業で働くことと中小企業で働くことは異なる点が多い。企業参謀に必要な資質について“番頭さん”サービスを生み出した、ビジネスインテリジェンスの山村博文社長に伺った。

山村社長へのインタビューの第1回。金融機関のコールセンターで、顧客データ分析に携わったメンバーが、廃業を機にコンサルティング会社を興し、やがて番頭さんサービスを誕生させる。なぜコンサルティング会社が番頭さんサービスを始めることになったのか。その背景に迫る。

前職では電話の内容から顧客データを作成

もともと私は中小金融機関におりました。当時は今と違い、借り入れのニーズが非常に高かったので、預金を集めるためにコールセンターを立ち上げたんですね。1993~94年に金利の自由化が始まった頃のことです。一口にコールセンターといっても、ただ電話を受けるだけでなく、このお客様は何をしゃべって、どういう質問をしたか、というのを一件一件くまなく調べました。調べていくと、このお客様の金融資産や他に取引している金融機関、家族構成などがすべて見えてきます。そこから、その方の金融資産を想定していきました。要は顧客のデータベースを作る。今でいうビッグデータ解析です。

非常に失礼な話ですが、当時は“魚群探知システム”という名前をつけて、金融資産1億円をお持ちの方はクジラ、5000万円以上がマグロ、3000万円以上がタイ、300万円以下はイカとランクづけし、それに合わせてセールストークを展開しました。この魚群探知システムで調べていくと、やはり2割ぐらいの方が主要ターゲットになることが分かるのです。

仲間4人で起業することを決意

コールセンターと銀行の窓口、外交と連動することで、シームレスにお客様に対応することができて、非常に大きな成功をおさめました。たった8~10人のコールセンターの契約金額が46店舗で受け入れる預金を上回るという驚異的な事態を生み出したのです。

ところがその後バブルが崩壊し、我々の金融機関も倒産しました。そのときにコールセンターを作った4人が「我々のノウハウがあれば、どんな会社でも成功するはずだ!」と美しい誤解をしまして(笑)。2002年にコンサルティング会社、ビジネスインテリジェンスを作ったんです。

世にあるデータをマイニングしたり統合したりしながらストーリーを作り、マーケティングを行う。ビジネスインテリジェンスの社名の由来は、ここにあります。

そうはいっても、簡単に起業を決めたわけではありません。ものすごく悩みました。ヘッドハンティングが来て「これまでの給料の倍は出す」と言われたこともあります。心がかなりぐらつきましたが、仲間が「いっしょにやろう」と言ってくれた。それで起業を決意したものの、本当は不安で胸がいっぱい。これからどうしたらいいのだろうという感じでした。

中小企業に転職していった元同僚

同僚の中にはヘッドハンティングされて、中小企業に転職していく者もいたし、そのまま金融機関に残る者もいた。ところが転職した人たちは、3年ぐらいでみんな辞めている。中小企業の創業者やオーナーと合わない、こんな理不尽な扱いは耐えられないと言うんです。携帯電話を持たされたけれど、土日、時間に関係なく電話がかかってきては「○○で飲んでいるから、すぐに来い」なんて呼ばれる。365日24時間態勢で指示を受けて、ヘトヘトになるまで働いて辞めるんです。

創業時代から社長についてきた部下たちは、その帝王に仕える術をよく分かっている。中小企業は社長の個性で伸びていくんです。ただし、ある一定のところで止まる。そういうときに外部人材をうまく活用すれば、また伸び始める。そういうことが分かったのは、まだまだ先の話。このときは周りから話を聞いて初めて、中小企業というものの片鱗にふれたという感じでした。

最初は婦人靴会社で大失敗

それはそれとして、我々は自信を持ってコンサルティング会社を設立しました。いろいろな会社に入り、顧客データベースからお客様のニーズを救い上げる、こういう調査は得意中の得意でしたから。

最初にコンサルティングを任せてくれたのは、百貨店に出店されている婦人靴のメーカー。顧客分析をしましょうと早速現場をチェックしたら、お店に来られるお客様の半数がお母さんと娘さんの親子。そこの靴の値段は1万5000円~2万円でしたが、娘さんはそこで買わず、他の店舗で1万円前後の靴を買っている。よくよく聞いてみたら、デザインがちょっとおばさんくさい、もう少し派手なものがほしいとおっしゃる。

話を統合すると、そこにチャンスがあるのに反応していない、売り逃しているということです。8000円~1万2000円ぐらいの若者向けの靴を作ればもっと売れるはずだ、というシナリオを作りましたが、結果的に何も変わらなかった。見事に失敗に終わりました。

それでコンサルティング契約は解約されたのですが、その頃は他にクライアントがいない状態でしたので、自分を使ってくれと自分自身を派遣しました。そこの婦人靴の会社に○○部長という名前で入らせてもらったのです。これまでは指導的立場でしたが、今度は実務を任されることになった。仕事が終わった後に現場の長と飲みに行くようになって、そこで初めて秘密を教えてもらいました。同時に今まで、いかに我々が愚かな仕事をしてきたかが見えてきたのです。

データだけでは分からない会社の実態

彼らが言うのは、先生の言うことは分かっている、分かっているけれど、一番の問題は中国の深圳の工場のしくみそのものなのだと。

この会社は中国の深圳に工場がありました。工場では黒字にするために、1万足もの大量の製品を作っていました。ところが1万足のうち、不良品や売れ残りが何割か出る。赤字の元凶は売る方ではなく、この工場が1万足生産していることだったのです。工場のトップはオーナーの親族。現場で聞いてみたら、黒字にしないと叱られるからやっている。必ず200人雇うこと、門番に地元の人間を使うことは、工場を作るときの約束なので、変えることはできないと。

結局、我々は1年かけて移動を強行。深圳から、さらに奥に行ったところに、30~50人の工場をかまえました。中国工場を独立採算制ではなく、社内の一部門と位置づけました。その結果、1万足作っていたものが数千足ですみ、人件費も激減。収益もあがり、その婦人靴の会社は大変身したんです。

そこで、まず「何が起こったんですか?」と税理士が驚いた。それで税理士から「面白いことをやっている会社がある」と我々の会社を何社も紹介してくれるようになったんです。

実態が見えないとコンサルは難しい

やはり中小企業でコンサルティングをやるといっても、実態が見えなければコンサルティングはできません。さらにいえば、新規事業をやる、経営改革をするといったときには、会社の中に入らないと難しいということです。それならば外部人材を紹介して、必要なところに入れたらどうだろう、と今の“番頭さん”の土台ができ上がりました。コンサルティングをする予定だったビジネスインテリジェンスは、“番頭さん”を紹介するサービスに変身していったわけです。

山村博文
株式会社ビジネスインテリジェンス代表取締役。
関西学院大学卒、金融機関勤務。主に企画部門、マーケティング部門に在籍。韓国初の民間銀行である「新韓銀行」設立準備委員。02年に株式会社ビジネスインテリジェンス設立、大企業OBを中堅・中小企業に紹介、派遣する“番頭さん”サービスを専業とする。
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