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仕事
2018年07月04日

ミニマム起業のための実践知識シリーズ vol.2

定年期だからこそ知っておきたい!

ミニマム起業のための実践知識シリーズ vol.2 2018.07.04働く


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成功実例からわかる!「年金プラス型」の堅実な事業を立ち上げよう!

個人が独立・起業する際には、あまりお金をかけず、最低限(ミニマム)で立ち上げることが望ましいとされています。体力の低下が進む定年期であればなおさらです。ここでは、お金をかけず、知恵を生かして起業する、「ミニマム起業」に必要な実践知識を紹介していきます。

ミニマム起業のための実践知識シリーズ2回目は、定年後のミニマム起業で、実際にどんなビジネスをすればよいかを紹介します。

定年期に起業される方の場合、ローリスクな「スモールビジネス」が妥当だろうと考えています。もちろん、シニア世代が起業して大成功する例もありますので、あえて小さな事業にする必要はないのかもしれません。しかし、ビジネスモデルを組み上げて大きな収益を得ようとすれば、当然資金が必要であり、ハードルが非常に高くなります。資金調達の選択肢としては「自己資金をつぎこむ・融資を受ける・出資してもらう」があります。自己資金は大切な老後の生活費用なので使いたくありませんし、融資は返済が厳しく、出資は応じてくれる相手を見つけるだけで一苦労です。どれも、そう簡単に選択できる道ではありません。

あまり若くはない世代ならではの、ローリスクな起業スタイル。それを念頭に置いて事業を考えるのが現実的です。実例を紹介しましょう。

起業例1:あえてハイリターンを目指さない海老名さん

東京・多摩エリアでプロボノ(NPO団体への支援活動を行う組織)の活動に従事している海老名要一さん(64歳)。会社員時代から社外ネットワークへの参加を積極的に行ってきました。地元のボランティアといろいろな取り組みを行う中で、NPO団体の広報活動のスキルをもっと高めるサービスを提供したらどうだろうと思いつき、ビジネスプランコンテストに応募しました。その結果優秀賞に採択され、起業支援を受けることになりました。しかし、もうすぐフル年金受給年齢に達する海老名さんの希望は、ハイリターンを狙うのではなく、ローリスクで、月に数万円稼げるような事業に育てられれば十分というもの。海老名さんによると、プロボノの人脈で、定年後に「ちょっとこれを手伝ってくれませんか?」とアルバイトの声がかかることがよくあるそうです。プロボノだけでなく、その他いろいろな仕事を組み合わせ、トータルで収入を得ていければいいとおしゃっています。

そんな海老名さんに、「年金にあとどれぐらいプラスすると生活が楽ですか?」と聞くと「年金プラス月10万円あると楽ですね」と答えてくれました。だから、海老名さんの起業計画は月数万円の収入がコンスタントに入ればいい、プラス、それ以外の仕事で月10万円を安定的に稼いでいく、ということがベースにあるようです。

金融広報中央委員会が毎年実施している「家計の金融行動に関する世論調査(平成28年)」で、老後の生活費や貯蓄に関するアンケートによる、全世代の平均額の回答が公表されています。それによると「老後のひと月当たり最低予想生活費27万円」となっていますので、年金だけでは厳しい。「年金プラス月10万円」あれば楽、という感覚は当然といえるでしょう。

普通にサラリーマン生活を送ってきた方なら、65歳から年金が出ます。「独立・起業して年金プラス○○」で考えるのが現実的なのです。

起業するには家族の同意が必要ですが、その際にも、こうした「年金プラス型」の方がおそらく話はしやすいはずです。もし、あなたが「定年後は独立・起業して会社員時代と遜色ない収入を得ていきたい」と家族に宣言するとします。説得できそうでしょうか。たぶんパートナーの方は、素直に賛成してくれないのではないでしょうか。

これに対して「年金収入だけでは厳しいから、ローリスクな仕事をいろいろ組み合わせてやっていきたい」と話せば、おそらく反対されることは少ないと思います。「年金プラス型」は、誰にとっても安心できるシナリオなのです。

さて、ではこうした基本姿勢でいくとした場合、何を「事業」にするといいのでしょうか。

一般的には、ホワイトカラーで長く勤めてきた人の場合、一番ローリスクということで、「コンサルタント」で独立・起業される方が多いようです。「コンサルタント」は、自分が長く携わってきた業界や業務に関わる知見を生かして、顧問契約やプロジェクト単位で報酬を受けるのが一般的です。「資格」はあるに越したことはありませんが、資格を取っても顧問契約を結べるとは限りません。やはり問題なのは実力であり、営業力です。前回述べたマネジメントメンター制度を利用してトレーニングを積むというのも、現実的な起業方法といえるでしょう。


一方、渉外活動に携わってきた人は「販売代理」を選ぶ方が多いようです。「販売代理」は、商品の供給先と契約し、なるべく在庫を持たずに出来高で収入を得るのが望ましいでしょう。また、これまで勤めてきた会社のネットワークを活用したり、その関連先を開拓するのが近道だったりします。こうした事例を紹介します。

起業例2:前職で培った販売力で起業した上水樽さん

上水樽文明(うえみずたる・ふみあき)さん(58歳)は大手メーカーを55歳で早期退職し、東京・銀座で合同会社オフィスTARUを立ち上げました。75歳まで働きたい、元気なうちに再スタートしたいということで起業を決意したそうです。退職した後も、在籍した会社といい関係を保ち、前職で培った宝飾品の販売を行っています。その販売にも、楽しいイベントを絡めたり、記念日を事業化したりなど、独自の工夫を行っています。

■ 合同会社オフィスTARU

実際に起業した人の話を聞くと、まったく違うジャンルに飛び込むより、ある程度前職で培ったネットワークや技術、知見などを生かす方が成功するパターンが多いようです。つまり、在職時から、会社といい関係を結んでおき、いつでもお互いにいい形で利用し合えるように地ならししておくことこそ、大切なのかもしれません。

藤木俊明
コンテンツ・メイカー / シニア起業ジャーナリスト。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。
明治大学リバティアカデミー講師。経産省関東経済産業局登録マネジメントメンター。金沢市出身。早稲田大学卒業後、リクルート、ぴあを経て、1991年有限会社ガーデンシティ・プランニングを設立。著書に『会社を辞めずにローリスクで独立・起業する』『ゼロから始める「1枚企画書」の書き方』他多数。
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