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仕事
2018年07月04日

ミニマム起業のための実践知識シリーズ vol.1

定年期だからこそ知っておきたい!

ミニマム起業のための実践知識シリーズ vol.1 2018.07.04働く


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大事なのは準備。起業に向けて自分で「滑走路」をつくれ!

個人が独立・起業する際には、あまりお金をかけず、最低限(ミニマム)で立ち上げることが望ましいとされています。体力の低下が進む定年期であればなおさらです。ここでは、お金をかけず、知恵を生かして起業する、「ミニマム起業」に必要な実践知識を紹介していきます。

定年期を迎え、「もうサラリーマンはしたくない、できれば自分で起業してみたい」と思っている方は多いと思います。しかし、願望はあっても、それを実行に移す方はそんなに多くないのが現実。お金の問題などもありますが、そのはるか手前の段階で、「何をどうしていいか分からない」と、何の行動も起こさないまま終了というケースが多いようです。

では、定年を控えたサラリーマンの方が、「起業をしたい」と思ったら、最初に何をすればいいのでしょうか。百聞は一見に如かず。まずは、実際に起業した人の事例を見ることで、「なすべきこと」を考えてみましょう。

起業例1:趣味を生かす!ウクレレで起業した松浪さん

神奈川・横浜で「ウクレレで笑顔サークル」を主催している松浪芳之さん(60代前半)。以前は大手デベロッパーに勤務し、忙しく働いていました。45歳でウクレレを手にして、高齢者でも弾きやすく、またマンションなどでも音の問題が起きにくいと感じ、地域でウクレレの集まりを開きました。そして会社勤めのかたわら、サークル活動を続け、59歳のときに早期退職制
度を利用して会社を退職。創業補助金にも採択されて、前述のサークルを事業化しました。現在は、ウクレレによる社内・地域のコミュニケーション活性化などに事業の幅を広げています。

■ ウクレレで笑顔サークル

起業例2:地方出身者だからこそ!水先案内人となった松下さん

「株式会社ベルサポ」を運営する松下正宏さん(50代後半)。会社員時代、ローリスクで社会に役立つような仕事をはじめたいと思い、地方出身者の「水先案内人」を行うサービスを考えつきました。自らも地方出身者である松下さん。会社に勤めながら、地方から東京に来る人の不安を解消するサービスを1年間試行しました。そして、受験に行く自分の子どもを案内してほしい、慣れない都会に来る老親を案内してほしいなど、若年層や旅行弱者などの「お出迎え・送迎・同行サービス」というニーズを見つけたのです。松下さんは54歳で独立し、現在東京・日本橋で事業を展開しています。

■ お出迎え・送迎・同行サービス ベルサポ

企業例から見えるポイント

ここでのポイントは、松浪さんと松下さんが、いきなり独立・起業したのではなく、会社に勤めながら事業の骨格を練るなど、十分な準備を行ったことです。会社員時代から、「会社以外の自分の仕事」を見つけ、ネットワークを築きはじめていたのです。

大企業にずっと勤めていると、自分の力を誤解しがちです。「自分は月に何十億の売り上げを動かしている。オレはすごいのだ」と思っておられる方もいるでしょう。しかしそれは、会社のブランドと仕組みがあってこそ。自分ひとりでお金を稼ぐことを考えてみてください。会社を離れて、あなた1人で月にいくら稼ぐことができるでしょうか。

意地悪で言っているのではありません。会社という場を離れたときの自分の実力を分かっていない人が、定年期になっていきなり世の中に出ていっても、そう簡単に何とかなるものではない。その「厳しさ」を理解してほしいのです。

松浪さん、松下さんの例からも分かるように、大切なのはとにかく「準備」です。飛行機もいきなり飛ぶことはできません。独立・起業を飛行と考えれば、そこに踏み出す前に「滑走路」を用意しておくことが必要なのです。

ここで言う「滑走路」とはいかなるものなのでしょうか。

1つは外部との人的ネットワークの構築、そしてもう1つは、会社と関係ない仕事と場所で自分の力で現金を得るトレーニングであると、私は考えています。

この「滑走路づくり」に、もっとも適するのは「副業」です。

副業というと、うしろめたく感じる人が多いかもしれません。確かに、昔は副業というと、会社に隠れて、夜に飲食店や肉体労働でバイトするイメージでした。

しかし、今では副業に対するイメージが変わりつつあります。2018年3月から就業規則モデルが変更になり、副業が「許可制」から「届出制」になりました。

また、インターネットを利用して、ライティング(執筆)を行ったり、コンサルティングを行ったりして収入を得られる「副業サービス」もいろいろ出てきています(巻末リンクを参照)。場所や時間に拘束されず、自分のペースで行えます。また周囲に知られることもないので、ぐっと現実感が高まります。つまり、社会全体が副業に対して追い風なのです。

まずはこうした副業で、「小さく稼ぐトレーニング」を開始する。そして、その活動を通じて、少しずつ人的ネットワークを広げていく。これが、私が考える「望ましい滑走路づくり」のかたちです。これならできそうではありませんか。

そうはいっても、「単なる小遣い稼ぎ」のための副業はお勧めしません。できれば、前述の事例のように、「自分はこの先、どういう仕事をやって暮らしていこうか?」を考え、それに役立つ副業を探すようにしましょう。そうでないと、滑走路としては貧弱になり過ぎてしまいます。

もう1つ、「滑走路づくり」に関係するものとして、外部の人的ネットワークと接触し、仕事を開発するトレーニングとして、シニア世代向けの公的制度をご紹介しておきます。関東経済産業局が登録を募集しているマネジメントメンターという制度です。

条件はおおむね50歳以上で、原則、大企業で実務を積んだ方が対象となります。これに登録すると、信用金庫が主催する中小企業との交流会に参加できます。そして、中小企業とマッチングが成立すると、3回までコンサルタントとして訪問します。時給5,000円(税別)で、その報酬は国から出ます。その後、中小企業と正式に契約を結んでも構いません。

中小企業との面談では、自分の何がセールスポイントなのか? 会社以外の顧客と個人で商談するとはどういうことなのか? 身をもって体験でき、うまくいけば定年後の仕事が見えてきます。登録についての詳細はリンク先(マネジメントメンター(関東経済産業局))をご覧ください。関東以外でも類似の制度は広がっていますので、ぜひ探してみてください。

やり方はいろいろあります。ぜひ、会社以外の人的ネットワークを構築し、できたら「小さく稼ぐトレーニング」を行って、自分の力で将来に向けた「滑走路」をつくりましょう。

副業に関連する参考リンク

■ ビザスク
1時間のスポットコンサルのアドバイザーとして企業の相談を受ける副業

■ ココナラ
自分のスキル(文章作成、IT技術など)を販売する副業

■ PIXTA
写真を委託販売する副業

■ マネジメントメンター(関東経済産業局)

藤木俊明
コンテンツ・メイカー / シニア起業ジャーナリスト。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。
明治大学リバティアカデミー講師。経産省関東経済産業局登録マネジメントメンター。金沢市出身。早稲田大学卒業後、リクルート、ぴあを経て、1991年有限会社ガーデンシティ・プランニングを設立。著書に『会社を辞めずにローリスクで独立・起業する』『ゼロから始める「1枚企画書」の書き方』他多数。
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