第１回で示したとおり、「定年前より現在の方が倹約している」という人は67.7％に達し、かなり高い率となっています（下図参照）。

他の世代と比較して相対的に豊かなシニア世代が倹約に走ることは、経済全体においては、おそらくあまり望ましいことではありません。しかし、稼ぐことが難しくなった世代の生活防衛としては当然であり、「努力」として評価すべきでしょう。また、次世代としては、前世代が生活防衛せずに済む社会づくりを進めなければならないという側面も見えてきます。

では、60代の皆さんは、どのように倹約に励んでいるのでしょうか。アンケートにおいては、フリーアンサー形式で「どんな倹約をしているか」を回答していただきました。以下、50代の方々にも、また60代（定年後）の方々にも、実践的に役立つ「生活の知恵」として、類型化しながら紹介していきます。

■ 類型１：日常の食費を節約する

1. ・食材は、特売にあわせて買いに行く
2. ・スーパーをはしごして食材をそろえ、ムダが出ないように調理している
3. ・チラシを見て、最安値で買い物をしている
4. ・食事や間食にかけるお金を1～2割減らした　など

■ 類型２：外食費や交際費を控える

1. ・外食が減り、自分で料理をするようになった
2. ・居酒屋に行く回数が減った
3. ・付き合いの飲食が少なくなった
4. ・友達とのランチ回数が減った　など

■ 類型３：被服費を抑制する

1. ・新しい服を買わなくなった
2. ・高い洋服や靴、バッグを買わなくなった
3. ・理美容、化粧品、衣類等の出費を控えている
4. ・服を買わなくなった。リサイクルショップを使うようになった　など

■ 類型４：光熱費や公共料金を節約する

1. ・できるだけ１つの部屋にいることで光熱費を抑える
2. ・風呂水を洗濯に、台所の水を植物に。夏は28度、冬は18度の室温
3. ・携帯電話を通信費の安いMobile Virtual Network Operator（MVNO）にする
4. ・スマホは格安SIMに変えた　など

■ 類型５：嗜好（しこう）品や趣味などの出費を減らす

1. ・ギャンブルをしなくなった。飲酒量を減らした（休肝日を設けた）
2. ・ヘビースモーカーだったが禁煙した。また禁酒で酒代もいらなくなった
3. ・旅行を控える
4. ・好きな本をよく買っていたが、今はガマンしている　など

■ 類型６：「惰性的支出」の見直し

1. ・有料会員の退会
2. ・テレビを見ない。新聞の定期購読をやめる
3. ・死亡保険の解約、医療保険の見直し
4. ・自家用車をやめてカーシェアリングを利用する　など

■ 類型７：全体的な引き締め、家計管理の強化

1. ・必要なもの以外は購入しない
2. ・生活費全てを見直して無駄遣いを取り除くようにして倹約している
3. ・家計簿をつけて支出全体を抑えている
4. ・１日に使う金額の上限を決め、それを超えないように努力している　など

こうやって、それぞれの「倹約努力」を具体的に回答していただくと、60代（定年退職後）の方々の日常がとても鮮明に見えてきます。収入が限られたなかで、いかに生活を持続可能なものにしていくかを、真剣に考えて日々を過ごしているのです。

では、それはシンドイことなのでしょうか。確かに、前記の類型の中には、「食費の切り詰め」のような、少しつらそうなものもあります。しかし、他の類型について言えば、単純に「ムダをなくす」、言い換えれば、水膨れした消費活動を、正常なものにする努力と見なせるものも多くあります。倹約や節約などと考えず、「正常化」「適正化」と考えれば、あまりシンドイと感じなくなるような気がするのですが、いかがでしょうか。

vol.2 完

vol.1はこちら

マクロミルのモニター会員に対するインターネットリサーチ
2018年03月14日（水）～2018年03月15日（木）実施
実施対象者：60代の定年退職者
n＝309（うち男性n=206、女性n=103）