定年前後の人のための「講師デビュー」入門 vol.0
培った知見が大きな財産!
定年前後の人のための「講師デビュー」入門・はじめに 2018.07.01学ぶ・教える
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なぜ私が「定年後に講師をする」ことをおすすめするのか
これまでのビジネス経験を、講師として次世代のビジネスパーソンに伝えていく。定年後の働き方として、とても魅力的に見えますが、「どうしたらその道に進めるのかわからない」という方も多いと思います。本連載では、講師養成の専門家であり、『定年前後の人のための「講師デビュー」入門』の著者でもある鈴木誠一郎さんに、「講師への道」をナビゲートしていただきます。
定年後の生き方は人それぞれです。「講師デビュー」入門の連載1回目では、たくさんある生き方の中で、なぜ「講師として働く」という選択が望ましいと考えるのか、その理由をお話したいと思います。
現在、定年後の生き方や方向性を考え始めている方、定年までには余裕があるけれど能力を生かした仕事を定年後も続けていきたいと考えられている50代の方々、さらに「講師」もひとつの自分の可能性として考えている方々に、ぜひ読んでいただければと思います。
自身の知識が生きる!「定年後に講師をする」という選択肢
私は現在、企業向けの教育研修講師とフリーランスのビジネスコンサルタントを行っています。この立場になってすでに10年。定年前に独立しましたが、現在、すでに定年を超えた年齢になりました。
研修はさまざまな業種・業態の企業で行っていますが、50代のベテラン社員の方向けの研修もしばしば担当しています。休憩時間や終了後の懇親会でベテラン社員の方々とお話をしていると、ご自分の定年後について、「今のところ、特に何も考えていない」と言われる方が非常に多いと感じています。
これまで企業の成長と繁栄を支えてきたベテラン社員の方々は、例外なくそれぞれの深い専門知識と経験をお持ちです。30年以上も培ってこられた独自の「知見」を定年で生かせなくなってしまうことは、大変残念なことであり、また非常に惜しいことであるといつも思っていました。
「私と同じように“講師”となって知識と経験を生かせばいいのに」と思うことがしばしばあります。と言っても、私自身、「講師」になろうと思っても、いったいどうすればいいのか、当時は皆目検討もつきません。そもそも、自分が「講師」になれるのかどうかすらわかりませんでした。そんなとき、参考にできるような「実践的」で「具体的」なノウハウを教えてくれるホームページや場があったら、どんなに心強く安心できたでしょうか。この連載では、サラリーマンの方が定年後に「講師」になって新たな生きがいと収入を確保していく方法やノウハウを「講師デビュー入門」というタイトルでお伝えしていきます。
サラリーマン時代のすべての経験が講師としての財産
ご存じの通り、近年の医学の急速な進歩に伴い、私たちの平均寿命は90歳も夢ではない状況になってきています。政府も「人生100年時代に合わせた仕事の仕方」をスローガンに、さまざまな施策を展開しようとしています。つまり、定年後に約30年~40年もの自由な時間が手に入るということです。考えてみてください。これだけの時間があれば、たいていのことはできます。何をするかについては、選択肢が十人十色なのです。しかも、今現在のあなたのままで、すぐになれるのが「講師」です。難しいことはありません。あなたが一番得意なこと、よく知っていることを話せばいいだけだからです。
あなたの人生の前半における、一番の「財産」は何でしょうか。それは、これまで長年にわたって培ってきた「知識」「能力」「技能」です。企業の定年になったからといって、これらの貴重な「財産」を自ら捨ててしまうのは、とてももったいないこと。あなたの頭の中にある豊富な「知識」を教えてほしい、「経験」を話してほしい、「技能」を伝えてほしいと思っている人は、必ずどこかに存在しています。そのような方々に、あなたの中にある「知識」や「経験」「技能」をぜひ伝えてあげてください。
人に伝えるという行為は、大きな充足感を伴います。なぜなら、自分自身の存在感を認識することができるからです。これは、私自身が体験していることですから、自信を持って言えます。定年後、約30年以上におよぶ長い時間を、自分らしく充実したものとして生きていきたいと考えたとき、今回の連載がひとつの参考となればこれ以上の喜びはありません。
想像以上に多い!“11万時間”もある定年後の自由時間
現役の会社員の方にはイメージしにくいかもしれませんが、会社員が「定年」を迎えると、「11万時間」という「財産」が転がり込んでくることになります。この「11万時間」という時間が、どのような意味で、どれだけすごい時間量なのか、それは以下の計算を見るとイメージできると思います。
仮に、22歳で就職して60歳で企業の定年を迎えるとして、その間に働いた時間と、定年後から83歳(日本人の60歳男性の平均余命23年(女性は28年)、平成23年簡易生命表/厚生労働省)までの自由時間を単純計算してみましょう。
サラリーマン時代の労働時間
8時間(1日の労働時間)×5日×50週(年間週数)×38年=7万6000時間
定年後の自由時間
14時間(睡眠や食事入浴時間を引いた1日の時間)×365日×23年(男性平均余命)=11万7530時間
38年間という長い年月を、会社員として働いてきた日々を思い返してみてください。学校を卒業して、入社したばかりで右も左もわからない新入社員時代。前だけを見て夢中で仕事をした30代。会社に十分貢献したという実感があった40代。そして、熟練の50代。それらが、「約7万6000時間」という時の流れだったのです。
そして、定年後には、それ以上の「時間」があなたを待っています。「えっ!そんなに時間があるの?」と思われたことでしょう。この定年後の膨大な時間量をみれば、もはや「余生」などとは言っていられません。定年後は人生のおまけではないのです。
そう考えると、サラリーマン時代はまだ「前半生」でもあったと言えるでしょう。定年というのは、人生の折り返し地点であるとともに、第二の人生のスタートラインです。定年後は、それなりの年金も入ることから、現役時代のように「稼ぐ」ことだけに軸足を置いて考える必要はありません。今後は、自分がやりたかったことに時間を使い、自分が充実感や存在感を得られるように、仕事をして生きていくことができるのです。これが、若さを保ち、よりよい後半生を創造していく原動力にもなります。とても魅力的なことではないでしょうか。
そのような状況の中で、私は自信を持ってあなたに「講師デビュー」をすることをおすすめします。今後の連載で、「講師」を強くおすすめする「具体的理由」と、「どのようにして講師デビューするか」という具体的方法について詳細にお伝えしていきたいと思います。

- 鈴木誠一郎(すずき せいいちろう)
- 京都府生まれ。立教大学経済学部卒業後、日産自動車株式会社に入社。
同社にて28年間勤務し、その後ビジネスコンサルタントとして独立、大手輸入車メーカーの正規ディーラー向け経営改善コンサルタントとして売上げアップに貢献。現在はコンサルタントを養成する「オンリーワン・コンサルタント養成アカデミー」を主宰し、コンサルタント志望のビジネスマンをフェイスツーフェイスで支援する活動に取り組んでいる。著書として関連図書に『定年前後の人のための「講師デビュー」入門』、『普通のサラリーマンでもできる!週末コンサルの教科書』がある。