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仕事
2018年06月30日

不思議の国の不思議なカイシャ vol.1

外国人女性が見た日本企業の実態

不思議の国の不思議なカイシャ vol.12018.07.0150代の歩き方

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入念に事前準備はするけれど、事故が起きるとパニックになる日本人(前編)

私たち日本人にとっては当たり前のことでも、外国人の目には奇妙に映ることもある日本の組織。日本在住10年以上の外国人女性たちに、日本企業特有の物事や、印象深いエピソードを聞きました。

不思議なカイシャ

大企業から中小企業まで、さまざまな日本企業を見てきたマリアさん。外国人という立場から見た日本人らしさとはどんなところか。そして、日本の企業特有の物事や、仕事をする上で他国と大きく異なる点とは何だったのでしょうか?

しゃべらなくても何でもできる国

日本に来て1年目、もともとおしゃべりが好きな私は、この社会に溶け込めないと感じました。その理由は、海外ではカフェで知らない人同士でもちょっとした会話があるのがふつうですが、日本では誰も声をかけてくれません。しゃべらなくても何でもできる国だな、というのが日本に対する第一印象です。

仕事に関しては、大手企業から中小企業相手のベンチャーまで経験してきました。外国人である私が職場に入ると、日本人の海外展開に対するネガティブさを感じることがあります。もちろん、みんな丁寧に接してくれます。しかし、時差や言葉など理由はいろいろあるでしょうが、実際には、「外国人が来ちゃった」「なんで海外のことをさせられなきゃいけないんだ…」という、いやな雰囲気が生まれます。経営者やマネージャーとはうまくいくのですが、現場の人からはあまり好まれていないと感じました。

例えば、いろいろな職場で「週に1回、基本の語学レッスンをしましょうか?」と提案すると、経営者はぜひやってほしいと希望するけれど、1回も実現したことがありません。ふたをあけてみると、いつも参加者はゼロでした。

謙遜しながらも無意識で日本が1番と思っている

日本人はすごく謙遜する民族。マメなところは素晴らしくて好きです。ただ無意識に「日本が1番!」と思っているところがあるように感じます。「外国人はルーズ」といった切り捨てが多く、出発点からして海外に対して全く信頼していません。特に技術に関してはプライドがすごく高いようです。

例えば、ある外国でイベントがあったとします。イベントで使う機材に日本人が開発した部品があると、日本人は「外国人は雑だから絶対に丁寧に扱えない。日本から3人呼ぶ」となります。海外でふつうに使われているものでも、技術者は日本人じゃないと、というこだわりがものすごくあるのです。そして日本人は1人では来ません。複数人で来るから、経費がかかります。コストをかけない方法のひとつとして、現地の技術者を使うのが代替案だと提案しても、外国人に任せてくれないのです。でも結局、日本人は言語ができないので、現地では話にならないことが多々ありました。クオリティーコントロールという発想は理解できますが、そういうしくみとは別に心理的なことが多い気がします。

どんな仕事でも、とにかく日本がいいという姿勢だと、いつまでも何も進みません。特に40歳以上は頭が固いようです。外国人は日本を興味深く見ていますし、日本人も海外からヒントをたくさん得られるはずです。それなのに、「外国人はルーズ」という先入観が強すぎて、学びの機会を妨げているように思います。

私が思うに、日本は「外国人の世界」と「日本人の世界」の2つでできています。人種差別はありませんが、労働市場に関して言えば、ひとつの差別です。外国語の先生しかできなかった20年前に比べると、今は外国人も自分の会社を作ることができますから、かなりの進歩ですが、外国人であるという差別は少し残っていると感じます。むしろ法律のほうが、少しずつ進歩しているようです。

事前準備をしすぎて現場で対応できない

日本人の仕事の仕方として特徴的なのは、しっかりと事前準備をして事故を起こさないことを重視する姿勢。そして、いざ事故が起きると困ってしまうことです。日本の組織は上下関係が重要なので、決裁がおりないと解決できません。だから事故は少ないけれど、いざ起こってしまうと、その場で解決できないのです。

一方、ヨーロッパや中南米では、日本ほど準備をしないので、現場でいろいろなことが起こります。しかし責任者がいる、いないにかかわらず、現場で対応できます。ある程度のリスクマネジメントはするけれど「これを解決するために、どうすればいいか」という現場重視の姿勢が認められます。すべての国ではないにしろ、海外のほうが、現場が問題解決に協力的だと感じます。

例外なのはアメリカ。契約書に書いてあるかどうかということが基準なので、ある意味では動きにくいです。日本人は事前準備をしすぎている、アメリカ人は契約書がしっかりしすぎている、という感じでしょうか。

また日本の企業の中でも、大手と中小では差があります。大手の場合、責任者以外は絶対に責任をとりたくないという姿勢が見えます。中小のほうが、「現場を進行させるためになんとかしないと」と思っている傾向が強いです。

ひとつのことに集中しすぎてパニックに!?

想像力があればマニュアルがなくても対応できます。でも、日本人はマニュアルが完璧すぎるためか、problem-solving(問題解決)が下手。事故が起こったら、せめて想像力を働かせて、パニックにならないことが必要です。また事前準備がありすぎるせいで、リスクマネジメントの余裕も持たせていません。海外と仕事をするときは、想定している倍の余裕を持つこと、10%はエラーに備えた予算を持っておくことが必要なのではないでしょうか。日本では見積書と1円でも違うと大変です。

日本人の事前準備と言えば、こんな忘れられないエピソードがあります。日本人のあるクライアントが、短期滞在のためにフランスでアパートを借りることになりました。海外はセキュリティーの問題上、鍵の暗証番号は、ほぼ当日まで教えません。しかし、その人はすごく前から「暗証番号は?」と毎日のように聞いてきます。当日まで教えられないことを説明しても「どこで渡されますか?」「誰に渡されますか?」などと、しつこく聞いてきて完全にパニック。もっと重要な準備がたくさんあるはずなのに、鍵のことばかり。やりとりは、すべてアパートのことでした。

事故の連鎖を想像するのでしょうか。マニュアルに慣れている人たちは、パニックになると、そこだけに集中してしまうよう。どうでもいいことでパニックになることがあります。

世界中が学んでほしい日本のサービス業は世界一!

一方、外国人が日本人から学べることもたくさんあります。そのひとつがマナーです。気を遣う、あいさつをするといったことは相手に安心感を与えます。会社でもそうですが、お店でもあいさつされるのはとても心地がいいもの。日本のサービス業は世界一だと思います。世界のサービス業界の人が1か月、日本で研修をしたら、すごくプラスになるでしょう。

そしてマニュアルを作る能力もすごく高いと思います。学校の教材や教え方もレベルが高いです。教育番組もすごくいい。他の国ではあれほど図解しませんし、してあったとしてもとても下手です。日本では言語がわからなくても絵を見ればわかります。日本人は難しいことを丁寧にわかりやすく説明するのが、とても上手なのです。

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マリアさん
ヨーロッパの某国出身。30代後半。日本在住10年以上。大学、大手企業、中小企業など、さまざまな日本の組織を経験してきている。
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