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健康
2018年07月01日

定年後のストレスは独特!?医師が教える今からできる4つの対策

定年後のストレスは独特!?医師が教える今からできる4つの対策 2018.07.0150代の歩き方


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定年後は、環境変化から、身体だけでなく精神面でも不調を起こしやすい時期なので注意が必要です。新宿ストレスクリニック院長の渡邊氏に、起こりうる精神面の不調や、いざ起こったときの対処法をうかがいました。

定年後に起こる喪失感や違和感の正体

定年を迎えると、家で過ごす時間が長くなったり新しい職場にうつったり、少なからず環境が変わります。環境が変わると、メンタル状態も変わりやすくなります。

仕事がいやでしょうがなく、ようやく定年になって楽になるという人もいますが、それは意外に少数派です。多くの人が、多かれ少なかれ仕事にやりがいを感じ、仕事一筋で頑張ってきているのです。ところが「定年」という二文字のもと、急に辞めることになった、あるいは大事なポジションを外されたということで喪失感を覚えます。

また、毎日家にいるようになり、時間をもてあまして違和感がある。そういった環境の変化が、喪失感や違和感の正体であり、負に働けば、精神に不調をきたし、軽度のうつ病を発症することもあるのです。

実際にクリニックを受診された60代男性の例を紹介しましょう。今まで非常に仕事に没頭していたけれど、定年を迎えてからはやることがなくなった。それほど社交的ではないから、地域の集会所に行っても面白くない。でも、毎日やることがなくて時間をもてあましている。そんな中調子を崩されて、こちらに来院されました。

病院というと抵抗を持つ方も多いかもしれませんが、その男性はうつ病という診断がつき、治療に励まれ、今ではだいぶ回復されています。最近は新しく何かを始めてみようかなと気持ちも芽生え、前向きになられました。

この男性のように、不調を感じてから病院で治療するという方法もありますが、定年後の喪失感や違和感の正体を知っておくことで対策することもできます。次に、今からできる4つの対策法をご紹介しましょう。

対策その1:生活サイクルを大きく変えない

定年後に新たな会社に就職される方も多いでしょう。違う環境で仕事ができる喜びもありますが、新しい仕事に慣れるまでは大変ですし、新しい人間関係につまずくこともあります。年齢や体力の問題もありますから、頑張ったあとには、どっと疲れがきます。そのため、定年後のセカンドキャリアはいきなり全力で飛ばさずに、少しずつ様子を見ながら、ゆっくりと進むことが大切です。

そのためには、生活サイクルを以前とあまり変えないことをお勧めします。職場や人間関係が変わるなら、せめて仕事に行く時間は変えない。例えば今まで朝9時から5時まで働いていた人が、急に夜勤で働くといったことは避けたほうがいいでしょう。身体のリズムを一定にできれば、新しい環境にも適応しやすくなるからです。可能なら仕事内容もあまり変わらないほうがよいでしょう。パソコンが苦手なのに、定年後に事務仕事に就くと、ストレスはたまる一方です。なるべくなら、生活サイクルか仕事内容、せめてどちらかは同じ状況を続けられるよう工夫されるとよいですね。

そして再就職に挑戦は不要です。「どうしても、これまでしたことがないことにチャレンジしたい」という人は、部分的に挑戦すればいい。一度に挑戦しないほうが、心身にとっても安全です。

対策その2:ストレス解消法は「相談・運動・睡眠」

定年後は環境の変化だけでなく、加齢による身体の変化にも気をつけたいところです。特に50~60代の男性は睾丸から分泌されるテストステロンという男性ホルモンが減少することで、精神状態が不安定になりやすくなります。いわゆる男性更年期です。個人差もありますし、みんながみんなそうなるともいえませんが、年齢に伴い体調も気をつけなければということです。過度なストレスがかかることは避けましょう。

環境や身体の変化でストレスを感じたときにお勧めの解消法が3つあります。

 一つ目は誰かに「相談」すること。家族や友人など身近な人や自分が安心できる人に話を聞いてもらうだけで、かなり気持ちが楽になります。それで不十分な場合は、病院に行くという手もあります。自分一人で抱え込まず、早めに対応しましょう。

 二つ目は「運動」です。激しい運動ではなく、ゆっくりと動くもの、例えば水泳やジョギングなどがよいでしょう。スポーツクラブに通うのもいいですね。自分に合ったペースで運動していくというのは、非常にお勧めです。

 三つ目は、とにかく「寝る」ことです。やはり寝ると心身ともに楽になる。寝不足は不調の原因になります。新しい生活は、いろいろな意味でハードですが、しっかりと睡眠をとって自分自身の調子がいいと、取りあえず何とかなります。そうこうするうちに新しい生活に慣れていく。寝るとリセットされると覚えておいてください。

対策その3:定年後も続けられる何かをつくっておく

定年後は完全に引退せず、仕事をしたり、趣味を広げたり、ずっと活動を続けている人のほうが元気です。それがないと、どうやって生きていこうかと余計なことを考えてしまうからです。 我々もそうですが、すごく忙しい病院だと余計なことを考える暇がなくて人間関係も意外とうまくいく。でもすごく暇な病院はやることがないので、お互いを責めたり陰口をたたいたり、ろくなことがありません。時間がありすぎるのも考えものです。

だから、定年後の方々も無理のない程度に、ゆっくりと持続可能な範囲で趣味や仕事を続けていくとよいでしょう。急に定年になってから考えると大変なので、今のうちから考えておくとよいですね。さらにいえば、定年前から始めておけば、定年後にあまり環境を変えずにすみます。

対策その4:期限は決めない。一日一日を大切に

定年前後の方々に「無理のない範囲で続けていきましょう」と話すと、「いつまでやればいいのでしょう」という質問を受けることがあります。こういった期限も決めないほうがいいでしょうね。決めたら、そこまで頑張らないといけないし、逆に決めなければ、もっと頑張れるかもしれない。決めることのメリットは、あまりないのです。

何でもそうですが、物事には時期というものがあります。自分が辞めると言っても相手がちょっと待ってくれと言ったり、自分が辞めたくなくても契約期間が切れたり、人生はなかなか思った通りにはいきません。だから、あまり先のことは決めず、一日一日を後悔しないで生きる、そういうスタンスを大事にするとよいでしょう。

 ずっとお話ししてきたように、定年前後は環境や身体の変化でストレスを感じることがあると思います。しかし、50~60代はこれまでずっと一生懸命頑張ってこられた方々。自信を持って、第二の人生、セカンドキャリアに臨んでほしいですね。


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定年してからも多くの出会いと発見がある人生を送ってほしい、通勤・就寝前のほんの少しの時間、各ジャンルの設問に答えるだけで、あなたが知らない自分に気がつける。きっと・・・これからの人生を豊かにする答えがここにあります!

渡邊 真也氏
新宿ストレスクリニック 統括院長・本院院長
2008年大分大学医学部卒業後、松阪厚生病院勤務を経て、新宿メンタルクリニックに。精神保健指定医、日本医師会認定産業医、日本精神神経学会会員、米国臨床TMS学会会員

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