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2019年07月17日

「プロボノ」を知っていますか?

「プロボノ」を知っていますか? 2019.07.17定年後入門


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「プロボノ」という言葉をお聞きになったことはありますか?

「プロボノ」とは営業やマネジメント、調査、マーケティング、デザイン、制作、経理、営業など様々なスキルを持ったビジネスパーソンが普段の仕事で培った能力を普段の仕事から離れた場所で活かし社会貢献をする活動のことです。

普段、会社にお勤めになっているビジネスパーソンが、各々が仕事上で培ったスキルや人脈を活かしながら社会貢献活動に取り組むことができるように手助けをしているNPOがあると聞いてお話をうかがいました。

NPO「サービスグラント」代表の嵯峨生馬さんは、1998年に大学を卒業されたあとしばらくの間、会社勤めをご経験されました。2005年に現在の法人の礎となる活動を開始、2009年にNPO法人「サービスグラント」を設立され代表に就任されました。

Q:先ずは、「プロボノ」について教えていただけますか?

嵯峨さん
プロボノというのは、ボランティアの一種なのですが、その中でも仕事で培った経験やスキルを活かしたボランティア活動、社会貢献活動ということができます。経験やスキルの中には、いろんなものがありまして、例えば営業されている方であればお客様になにをどう提案してそれをビジネスに結びつけるかといったところの経験があるでしょうし、総務や人事を仕事にしている方であれば事務作業をいかに効率的に運営していくかといったところでご本人も気づかないうちに多くのスキルや経験を身につけていらっしゃいます。他にも、マーケティングとかITとか、経営コンサルティングとか、色々な仕事がありますけれども、お仕事されている方というのは、それぞれの道で経験やスキルをお持ちなので、その力をNPOや地域団体の活動の中で活かしていただくと非常に大きな力になるんです。それを「プロボノ」といいます。

Q:嵯峨さんたちの運営なさっている「サービスグラント」は、ビジネスパーソンがプロボノを気軽に効率的に行えるように設立なさったんですね?

嵯峨さん
そうですね……。もちろん、サービスグラントのような組織がなくても個人で自分がやりたい社会貢献活動を見つけて自分で飛び込んで行って、「私、●●が得意です!」と言ってプロボノをしていただくことはもちろん可能なんです。ただ、多くの方は、ご自分がどんな社会貢献活動にどういった形で携われるのか、ご自分のスキルをどう活かせるのかが分からない。そういった中で、サポートを必要としている団体や人と、「プロボノ」として活躍したいという意思を持っている方の橋渡しをするのが「サービスグラント」なんです。

Q:どんなことが「サービスグラント」設立のきっかけになったのですか?

嵯峨さん
私はサービスグラントを始める前に、別のNPOをやっていました。元々、会社でも働いていたのですが……。NPOの運営って大変なんです。色々な細々したこともありますし、やらなきゃいけないことはたくさんあるのに、人手が足りない、人を雇おうにもそのお金も無いのが普通なんです。サービスグラントも運営にとても苦労していた時期がありました。

私も皆さんのように会社勤めをしていたんですが、そのとき、色々な調査事業に関わっていたんです。たまたま、日本とアメリカのNPOの比較調査をするミッションでアメリカのNPOに足を運ぶことがありました。その時、プロボノで活躍をしている人たちがいらっしゃるというのをちらっと聞きまして、すごく気になったんです。調べてみると、参加している人のスキルを活かしたボランティアであることが分かったんです。当時、その考え方というか、言葉すらも知らなかったわけで……。「目から鱗」と言いますか、こんな考え方があって、しっかりとした成果を上げていることに、本当に驚きました。それでこんなのが日本にもあったらいいなと思って活動を始めました。

Q:設立の時、ご苦労などはございませんでしたか?

嵯峨さん
たくさん苦労しましたが、アメリカで活動をしている団体の方に「先ずは小さく産んで大きく育ててください」と言われすこし気が楽になりました。だから、最初は20人くらいの小さな体制で、3チームを作って3団体を応援する非常に小さな活動から始めました。

それでもプロジェクトが最後まで完遂できないというようなことが起きました。最初はものすごく皆さんやる気で、きっといいプロジェクトになるだろうと思っていても、途中でメンバーが抜けてしまったり、あるいは支援する内容が途中でブレてしまったり、目的完遂まで行き着けないということがあって……こんなことが起こるんだなと思い、今後似たようなことが起こらないように、プロジェクトの成功率を高めるためにはどうしたらいいか、あれこれ悩みました。それこそがやり甲斐でもありましたが……。

Q:例えば、人が抜けてしまったボランティア団体があって、その人の穴を埋めるための支援をするのが「サービスグラント」なんですね。

嵯峨さん
ええ、そういう活動もしています。おっしゃるように、抜けてしまった穴を別の人で埋めることはもちろん必要ですが、その前に、「抜けないために」先にどういうことをしておくかということですね。登録された方の状況を事前に確認することを前もってやっておくことも大切なんです。

Q:プロジェクトが最初の趣旨からずれていってしまう過程も見て来られたと思うんですが、そういうのは、何がきっかけで起こるんですか?

嵯峨さん
ボランティア活動というのは、割と皆さんがなにかをやりたいと思って集まるんですね。なにかやりたい、人の助けになりたいという気持ちが強いと、元々やろうと思っていたこと以上に「もっとやりたい」となっちゃうんですね。思いが強すぎて最後は収拾がつかなくなってしまうんです。

企業の場合は、お金というのが条件の一つで、どこまでやる、どこまで以上はやらない、と厳格に決めますよね、ボランティアもそういう歯止めが大切で、そのタガが外れてしまうと歯止めをかけるものがなくなってしまうんです。

Q:ボランティアなんだから、自分のやりたいようやる、という人もいるでしょうしね。

嵯峨さん
善意でやったことでも、それを相手が望んでいないことである可能性もあるんです。それから、やりたいと思ってやってみても、やりきれずに中途半端な結果になってしまうこともあるわけです。

これは、プロボノによくあり得るリスクなんですけども、こういうことが発生しないようにするのも我々の活動の一部なんです。

Q:プロボノに参加される方というのは、多種多様なキャリアを持った方がいらっしゃると思うのですが、具体的にはどんな方がいらっしゃいますか?

嵯峨さん
参加していただく方の幅はすごく広いのですが、言えるのは現役の社会人の方がかなり多いということですね。これ自体がボランティア業界の中ではかなり異色なんです。ボランティアというのは一般的に学生さんや、退職の直前、あるいは直後とか、子育てが終わった女性とか、ご年配の方とか……。現役の割と忙しい社会人の方は、ボランティアはしないと言われているんですが、プロボノの場合は、現役で会社でも一番忙しい人たちが中心的な参加者なんです。年齢でいうと、20代から50代まで。50代の方も最近、かなり増えています。男女比でいうと、男性が6割、女性が4割くらいという比率です。

Q:「定年後研究所」のwebサイト「定年3.0」を訪れてくださる層にぴったりですね。職場の主力として忙しくしていても、一方でサラリーマンとしてのゴールが見え始める時期に、会社とは別の場所でも自分のスキルや経験を活かせる場所を見つけることができれば、それは素晴らしいことですよね。

嵯峨さん
はい、やはり定年後のことを考えるのは定年を迎えてから、というよりは、その前から少しずつ慣らし運転をするのはいいのでは、と私たちも思っています。

Q:嵯峨さんは会社を辞めた後、会社以外の人脈を作るとか、自分で培った人脈を有効に活用するためにもプロボノは非常に有効であるとお考えなんですね。

嵯峨さん
はい、そう思います。そして、会社を辞めなくても参加できるのもプロボノの特徴です。

プロボノ活動はあくまで、ボランティア活動で、週5時間を目安に参加いただいているんです。その5時間の中には、メールを見るとか、ネットであれこれ調べるというのも含まれているので、あまり時間的拘束はないんです。

Q:活動を続けているうちに同じ志を持った仲間が増えていったりすることもありますか。

嵯峨さん
はい、活動はチームで取り組むというのがミソなんです。プロボノで集まる皆さんは、基本的には違う業界や違う職種の人たちでチームを構成するようにしています。IT企業の方もいらっしゃれば電機メーカーの方、金融、製薬会社の方もいらっしゃいます。様々な業界の人たちに5〜6人のチームを組んでいただいて、支援要請のあったNPOなどに入っていただきます。そうすると、なかなか普段の仕事では出会わないような業種、職種の方と一緒に、ボランティア活動に取り組むことになりますので、普段の仕事のスキルを活かしながら、普段の仕事とは違う刺激が受けられるというところがあります。

Q:サービスグラントでは、様々な試みを展開されているんですね!
その中で、これは定年後研究所のwebサイトユーザーにいいんじゃないかというものはありますか?

嵯峨さん
一般の方が参加する通常のプロジェクトも色々あるので、詳しくはサービスグラントのホームページを見ていただけると有り難いです。

体験型のプロボノプログラムという形で、この夏にスタートしようとしているのがあります。それが『ライフシフトプログラム』というものなんです。

8月31日から10月5日まで、非常にコンパクトな、トータルで1ヶ月間というスケジュールで参加いただける体験型のプロボノプログラムです。特に40代以上の方にご参加いただきたいと考えています。東京都内の身近な地域で活動している団体の課題に触れながら、異業種の皆さんたちとチームを組んでその団体の課題解決にチャレンジしていただきたいです。

プラス、ご自分のキャリアの振り返りや、ソーシャルセクター入門と言いまして、そもそもNPOとは何か、みたいなことや、基礎知識の座学のようなものもありますので、4日間で非常にコンパクトにプロボノを体験していただけるという企画を用意しています。

今回は、3つの支援先団体のうちのどこかを応援していただこうと考えています。

Q:「一般社団法人 輝水会」「NPO法人 シニア大樂」「小金井市けやき通り商店会」ですね。

嵯峨さん
いずれも東京都内で活動している団体さんでして。たとえば輝水会は、リハスポーツと言うリハビリ的な要素を取り入れたスポーツで、高齢者も障がい者も運動というものを通じて身体機能を回復させるということと仲間づくりを目的にしています。高齢者、障がい者は体が動かなくなって運動ができなくなっていることばかり注目してしまうんですが、できるというところに注目して自信をつけていただき、その方に主体性を取り戻していただくんです。

Q:参加してみようという方は、現在スポーツと関係ないような仕事をしている方でも、例えば営業職にあるような方でも何か役立つチャンスがあるわけですか?

嵯峨さん
むしろ、そういう方に集まってもらいたいです。特にNPOのことに関しては、全く今まで触れたこともないという方に来ていただきたいと思っています。

Q:そこで活動のイロハのイから教えていただけるんですね。
それでも、いきなり実戦参加はちょっと敷居が高いかなとお感じになる方もいらっしゃるかと思うのですが……。

嵯峨さん
そのような方のために、昨年、プロボノ参加のお試しのようなことをやったのですが、そこにご参加いただいた方の体験談などが聞けるようなセミナーを7月に開催します。ちょっとだけ興味をお持ちの方にはそのセミナーが入り口になればと考えています。

まずはそちらに来ていただいてプロボノとはどのような感じかというのを知っていただいてから、8月のプログラムに本格的に参加を検討していただけたらいいなと考えています。

「サービスグラント」は、様々な社会課題を市民参加によって解決するために、様々な立場や環境にある賛同者が互いの立場や違いを尊重しながら当たり前のように協働することができる社会をめざして日々活動されている素晴らしいNPOでした。

インタビューさせていただいた私(50代)も、なにか世の中の役に立つことができるのではないかと勇気をいただくことができました。

団体紹介

認定NPO法人 サービスグラント Service Grant Japan, Inc.

■ 東京オフィス
〒150-0002 渋谷区渋谷1-2-10 中里ビル4F
TEL:03-6419-4021/FAX:03-6419-3885

■ 関西オフィス
〒541-0047 大阪市中央区淡路町2-5-16淡路町ビル8F
TEL:06-6484-5810/FAX:06-6484-5820

■ 設  立:2009年 5月13日
代  表:嵯峨 生馬(理事)
理  事:生駒 芳子
理  事:川渕 恵理子
理  事:中野 宗
理  事:岡本 祥公子
監  事:石原 英樹
特別顧問:奥山 俊一

■ 事業内容
サービスグラントの提供を通じたNPO等支援事業
企業・行政等との連携によるプロボノプログラムの運営事業
プロボノプログラムの運営を担う人材育成事業
プロボノの普及・広報・社会的制度化に関する事業
その他目的を達成するために必要な事業

■ 沿  革
2004年
サービスグラント創業者の嵯峨が、米国でタップルートファウンデーションに出会う
当時嵯峨が執筆を担当していた月刊「ソトコト」の連載にて、米国のサービスグラントの記事を数ヵ月にわたって紹介
2005年
「ソトコト」編集者との協働で、当時丸の内にあった「LOHAS Kitchen & Bar」を拠点にサービスグラントの活動を開始
同年秋に、任意団体「サービスグラント東京」を設立
2009年
サービスグラントNPO法人化
日本財団による助成支援が決定
日本初となる大規模なプロボノイベント「プロボノフォーラム」をラフォーレミュージアム原宿で開催。374名が参加。
2010年
日本における「プロボノ元年」
企業と連携したプロボノプロジェクトを開始
クローズアップ現代やワールドビジネスサテライトなどマスメディアで紹介
2011年
関西におけるサービスグラントを開始
大都市から離れた地域をサポートする現地交流型「ふるさとプロボノ」を開始
広報・マーケティング分野に限られたプログラムを戦略構築や業務改善に拡大
登録プロボノワーカーが1,000人を突破
自治体・地域づくりにおけるプロボノの可能性を考えるフォーラム開催
書籍「プロボノ〜新しい社会貢献 新しい働き方」刊行
2012年
プロボノ・コーディネート人材の育成プログラムを開始
登録プロボノワーカーが1,500人を突破
広島県、佐賀県に加え福岡県、岡山県、静岡県でもプロボノプロジェクトを開始
被災地の復興や伝統工芸の支援を目的としたプロボノプロジェクトを開始
プロボノプロジェクト数100を突破
書籍「プロボノ」韓国語版発売
2013年
物語形式で社会課題を様々な視点からコンパクトに伝え共有するイベント「プロボノシェアター2013」を開催
第1回Global Pro Bono Summitに参加(世界12ヵ国が参加)
登録プロボノワーカーが2,000人を突破
大阪市と連携し、地域コミュニティ組織「地域活動協議会」の運営支援を行う「大阪ホームタウンプロボノ」を実施
「国際プロボノウィーク」初参加
日本財団「夢の貯金箱」における連携・協働を開始
ONE DAYプログラムを開始
2014年
育休ママたちによる「ママボノ」プロジェクトを開始
アジアのプロボノ団体が一堂に会し、最新の動向を共有し合う「アジアプロボノラリー」を主催国として開催
2015年
東京都福祉保健局との協働による「東京ホームタウンプロジェクト」開始
川崎市コミュニティ推進部との協働による「プロボノサマーチャレンジKAWASAKI」実施
10月下旬のプロボノウィークに「プロボノ1DAYチャレンジ」を東京・大阪で3連続開催し、
合計26団体を約120人のプロボノワーカーで支援
日経ソーシャルイニシアティブ大賞「ファイナリスト」選出
2016年
人財オープンイノベーションネットワーク(JOIN )開始
「ママボノ」プロジェクトを日本財団助成により東京10チーム大阪2チームで大規模開催
プロジェクトの立ち上げの段階から関わるプロボノワーカーが運営する「パートナー制度」を開始
2017年
東京都生活文化局との協働による「地域の課題解決プロボノプロジェクト」開始
大阪府福祉部との協働による「大阪ええまちプロジェクト」開始
東京都渋谷区との協働による「渋カツナビ」発行

■ 法人代表プロフィール
嵯峨生馬 1998年、東京大学教養学部卒
1998年より株式会社日本総合研究所の研究員として、官公庁・民間企業とともにIT活用、決済事業、
地域づくり・NPO等に関する調査研究業務に従事
2001年、渋谷を拠点とする地域通貨「アースデイマネー」を共同で設立し、2003年より代表理事
2005年、サービスグラントの活動を開始し、2009年にNPO法人化、代表理事に就任

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