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生活
2018年07月06日

最低限知っておきたい相続知識

最低限知っておきたい相続知識~「負動産」で苦しまないために 2018.07.06お金スクール


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人生も後半に差しかかると、親の死は避けがたい現実となって訪れてきます。同時に「相続」という、あまり慣れないテーマにも遭遇することになります。不慣れであるがゆえに、うっかり失敗し禍根を残すことになりがちなのが相続。そうした事態を防ぐための最低限の基礎知識を、不動産問題の専門家の立場からお伝えしたく思います。

親の資産を知らずに相続を迎える人が多い

50代に差しかかると、相続がひとごとでなく目の前に迫った現実的なことになってきます。私は不動産問題のNPO法人を運営し、不動産問題に関する相談を年間300件以上受けていますが、50代の方からの相談はとても多いと感じています。

相続税がたくさんかかる資産家の親御さんがいる場合を除いて、多くの方は、それまで相続対策なんてほとんど考えていません。「自宅があって多少の預貯金があって」と漠然とは分かっているものの、資産や相続について親ときちんと話したことはなく、実際のところどんな資産があるのかを把握できていないというケースがほとんどです。50代の方の親世代は「お金の話」をタブーとするところがあり、子供としっかりとお金の話、資産の話、相続の話をしない。だから亡くなってから親の資産を知った、調べるのに時間がかかって相続手続きが大変だった、という人がとても多いです。

怖いのは「負債」を相続すること

特に気をつけたいのは、親にマイナスの資産があり「負債を相続する」ことになってしまう場合です。相続は、プラスの資産もマイナスの資産も対象になります。プラスの資産よりマイナスの資産が上回っていたら、それは「負債の相続」でしかありません。

特にお気の毒だなと思うのは、「マイナスの資産」の存在を知らず、気がついたら「負債を相続する」ことになっていたというケースです。資産がマイナスであった場合、相続放棄をすれば負債を負う必要はないのですが、相続というのは原則として「相続が開始したことを知った日から3カ月以内にする」必要があり、その期間を過ぎてしまうと、いつの間にか「負債を相続」ということになってしまうのです(延長できる場合もありますが)。

親が亡くなり、葬儀や周りへのあいさつや遺品の整理、生命保険の手続きなどしていたら、どんどん時間はたってしまいます。そんな中、資産がどこに何があるか分からないと、調べているうちにすぐに3カ月は過ぎてしまいます。

また何とか資産は調べられても、借金などの負債までは3カ月ではなかなか調べきれません。目の前の借金はなくても、親が誰かの連帯保証人になっている「連帯保証人債務」も対象なので、その辺になるともはや「お手上げ」です。後で債権者から請求がきて親の借金があったのを知ったというケースも、多々あります。

エンディングノートで情報を入手しておこう!

こういった負債を相続しないために、どうしたらよいのでしょうか?

先に述べた「相続放棄」という方法はもちろんありますが、より重要なのは、親御さんが生きているうちに資産と負債を正確に把握しておくことです。しかし先に書いた通り、お金の話をすることを嫌う親御さんが多く、なかなか把握しにくいという現実があります。

これを解決する方法として推奨したいのがエンディングノート。かなり普及してきたので、今では本屋さんに行けば、容易に手に入れることができます。

「死」について考えることを嫌う人にしてみれば、エンディングノートというと少し抵抗感があるかも知れません。しかし自分の人生の振り返りなどもできるので、「実際にやってみると、なかなか楽しい」という感想を多くの人から聞きます。「今まで楽しかったこと」「感謝を伝えたい人」などを書いていて思い出に浸る。そういうこともできるのがエンディングノートの良いところです。

もちろん、資産の把握にも有効です。現預金の口座がどこにあるか、株、生命保険、不動産などを記載する項目もあり、その人の資産のことは大体分かります。相続時、慌てて負債まで相続をしないように、エンディングノートをきっかけに親と対話をする機会を設けてみることをお勧めします。

高橋愛子
NPO法人住宅ローン問題支援ネット代表理事。宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、ファイナンシャルプランナー、不動産コンサルタント
2007年2月に任意売却を専門とした不動産コンサルティング会社を設立。不動産問題で苦しむ人の多さを知り、2017年に「NPO法人住宅ローン問題支援ネット」を設立。啓発の執筆活動、講演活動も精力的にこなす。著書に『老後破産で住む家がなくなる!あなたは大丈夫?』(日興企画)など。
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