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仕事
2019年08月26日

自分のキャリアは自分で決める!vol.4

自分のキャリアは自分で決める!vol.42019.08.26働く


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世代間を超えた偉大なる社会のリリーフマンを目指して

政府は4月15日、希望する高齢者が70歳までは働けるようにするための高年齢者雇用安定法改正の骨子を発表しました。

これまでの3つの企業の選択肢
(1)定年延長
(2)定年廃止
(3)契約社員などでの再雇用

上記に加えて、次の4つの選択肢
(4)他企業への再就職支援
(5)フリーランスで働くための資金提供
(6)起業支援
(7)NPO活動などへの資金提供
を加えて企業に努力義務を課す予定です。

タイミングを計ったかのようにその同時期(2019年4月)に、経団連の中西宏明会長が定例会見で、終身雇用について「制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と改めて持論を展開し、話題になりました。

もちろん、経団連会長が「もう無理」といったところで、すぐに解雇規制が緩和されるわけではありません。しかしながら、従来から終身雇用や年功序列を柱とする日本型雇用の最大の擁護者であった経団連(経団連は、日本の「中心となる産業」の「中心となる大企業」を会員する団体です)の会長からこうしたコメントが出る意味は大きいです。

この2つのニュースを重ね合わせてみると、人生100年時代65歳以降80歳まで現役で働くためには、今までの延長線上ではない(4)から(7)を含めたキャリアプランを想定しておく必要があるということです。あなたの老後、もう見てみぬふりは出来ません。会社も国も最後までは面倒を見てくれないのです。

横軸に1日の24時間を、縦軸に生まれてから80歳までの年齢軸を取った人生総活動時間表です。この表でご自身の人生時間のポートフォリオが可視化できます。この表をご覧になってどのような印象をお持ちでしょうか。

長い長いと思っていた「社会人になってから定年まで会社に拘束されている時間」より「在職中の自由時間(個人が采配できる時間)」のほうが大きいことに意外感を持つ方も多いと思います。また、60歳定年後の時間が、20歳より60歳までの会社時間より長いことも意外という感想を持つ方も多いのではないでしょうか。

役職定年後あるいは定年後、定年再雇用後に目標もなく漫然と過ごすのではなく、ここをどうデザインして過ごすかであなたの人生という作品の出来栄えは大きく変わってきます。

 「人生終わり良ければすべてよし」ではありませんが、いくら現役途中まで世間的には立派なキャリアを過ごしてきても、キャリアの最後で不遇をかこい無気力な生活を送ってしまっては何にもなりません。

また、逆に言えば、現役時代には残念ながら出世に恵まれなくても、表中の60歳以降の潤沢な時間で充実した生活を送ることができればトータルとしての人生の充実感は前者をしのぐこともできるのです。

また、目に見えない閉塞感に覆われている日本社会ですが、若手層が後に続きたいと思えるような新たな働き方を提案することも現在のミドルシニア層の役割であり責務であるはずです。

地方では、中央のプロフェッショナルなミドルシニアの力を活用して、地域活性化を推進しようとする取り組みも始まっています。今後は親の介護で地元に戻る可能性も高まるため、都心の会社を辞めて介護をメインとする発想から、セカンドキャリアは自分の地元に戻って長年培ってきた経験・ノウハウを活かすという考え方も必要です。柔軟に介護対応を果たしつつ、生まれ故郷の活性化にひと肌脱ぐことでお金に代えがたいやりがい、社会的意義を感じることも可能です。

長い時間をかけて奥深いノウハウや知識を蓄積し、濃密な人的ネットワークを形成してきたミドルシニアの経験・スキル・人脈を活かさない手はありません。介護、育児など若い世代の活躍を妨げかねない課題解決にミドルシニアが貢献できる余地はたくさんあります。ミドルシニア世代も若手から「働かないオジサン」とお荷物扱いされている暇はないのです。

これからキャリアチェンジを検討する場合にぜひ意識しておきたい、実践的なキャリアの磨き方をご紹介します。筆者は、6年前に人事領域の個人事業主として独立しましたが、在職中から常に意識していた事項です。

「自分には専門性がない」というのはミドルシニア層の皆さんからよく聞かれる声ですが、そんなことはありません。「経理」「人事」「営業」など、大きな職種の括りで自分の専門性を埋没させる必要はありません。働いてきた企業や業種も異なり、対象としてきたクライアントも人それぞれ異なりますので、実は「経理」「人事」などで単純に括ることのできないスペシャルなスキル・経験を多くの人は持っています。

これからミドルシニアに求められるスキルは、評論家のように現場から離れてあれこれ評論するスキルではなく、今目の前にある現実の課題を自力で解決できる「超実務」スキルです。「超実務」スキルを磨き上げる材料は、今担当している仕事です。

大企業の人事部員、経理部員が中小企業で使えない理由は、この「超実務」から長年離れていることにあります。例えば、人事領域に関しては、採用から評価、異動、給与、研修、退職まで一気通貫でこなせる実務能力が求められています。しかし、大企業の多くは業務を外部ベンダーに丸投げ、あるいはプロセスの分割が進んでいるため、最初から最後まで自力で対応可能な人材が少なくなっていることが原因です。

「就社(会社に一生身をゆだねる)」意識から脱却し、「社会と直接つながる」気概を

役職定年でマネジメントから外されたと嘆く暇はありません。「超実務」を再度担当できるチャンス到来と考え、目の前にある一品一様の業務を「見える化」していけばいいのです。特に「すぐに目に見える成果が出ないために若手が敬遠するような仕事」にこそミドルシニアは率先して取り組むべきです。

若手が敬遠する業務の一つに業務の標準化があります。会社も口を酸っぱくして「マニュアル化しろ、業務の標準化を進めろ」と言いますが、労多い割には当たり前の仕事として評価されないのが業務標準化です。また、日常業務に追われてマニュアル作りなどやっている時間も暇も若手にはないのです。

ビジネスパーソンは誰でもいつかは、「今の会社に勤め続ける」、「転職する」、「出向する」、「独立起業する」という4つの選択肢の中から自らのキャリアを選んでいく必要があります。どのシナリオを選択する場合でも重要なことは、「自分は一国一城の主(個人)として会社・社会と契約をしている」という意識です。「会社への従属から対等の立場」へ、あるいは「会社に所属する就社から、社会と直接つながる意識」への転換と言ってもいいかと思います。

雇用の流動化の必要性が指摘されていますが、学生の就職ランキング上位には、相変わらず商社、保険会社、航空など筆者が学生時代と変わらない業種があがっている状況です。介護、医療、IT、農業など積極的に人的マンパワーの投入が必要な分野に、初めの投入段階からアンマッチが生じているのです。

なかなか進まない雇用の流動化ですが、様々な経験・ノウハウを持ったミドルシニアこそ、まずは産業間の人的アンマッチ解消の尖兵としての役割を担うべきと考えます。多様な働き方の実現という課題の解決は、長年の経験とスキルを磨き上げたミドルシニア層の双肩にかかっているといっても言い過ぎではありません。

これからのミドルシニアが目指す姿は、世代間を超えた偉大なる社会のリリーフマンです。長年の経験と高度な専門スキルを持つミドルシニアがこうした社会的課題の担い手として活躍することこそ、文字通り一億総活躍社会の実現であり、向かうべき姿です。

木村 勝 プロフィール
中高年専門ライフデザインアドバイザー、電気通信大学特任講師
1984年一橋大学社会学部卒業後、日産自動車に入社、人事畑を30年間歩み続ける。中高年の第二の職業人生を斡旋する部門の部長として、中高年の出向促進業務に従事。2014年独立。著書「働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書」(朝日新聞出版)
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